郭公、高野三山をさんざん楽しむの巻 (Dec.30, 2003)

 冬用の山ズボンにいいのはないかと先日UNIQLOへ行き、生地は化学繊維だが、裏の付いたのが990円のと1900円のとふたつあった。いずれも試着してみたが、まず後者は間にポリだけれど綿状ものが入っていて温そうだったが、どうも静電気が起こる。前者は薄手だけれど、静電気の心配はなさそうだった。穿き心地も後者のほうが僕には向いている。
 ついでに、1900円でウール100%のタートルネックのセーターを。冬はやはりウールに限るからだ。これまた薄手ではあったけれど。

 さて、天気予報では晴れマークだし、気温も高そう。
 先週、町石道だったから、きょうは高野三山へ。三山をひと回りでは三時間あまりらしいから、それではもったいないから極楽橋から歩こう。UNIQLOルックで行こう。

 先週と同じ急行に乗るべく自宅を出るとなにやら地面が濡れている。雨やったんか?
 電車に乗るとすぐ暑くなった。まずセーターを脱ぐ。
 紀ノ川は霧に包まれていた。停車駅の柵には一列に今にも落ちそうな水滴がならんでいる。あれれ。上は雨なんだろうか。
 霧を抜けると雲ひとつ無い青空になった。
 「昨日の雨で雪もだいぶ解けたようやな」
 数人の仲間らしい一団からそんな会話が聞こえてくる。山行きの格好でもない。極楽橋で下りると彼らは駅の事務室に入って行かれた。駅員さんだったのか。

08:00 
 地図をいただき赤い橋を渡る。道は石畳になっていたが急坂でもあり、濡れていてところどころ凍ってもいてかなり気を使った。
 この道は女人堂のそばに出る。駅から50分だった。徳川家霊台を過ぎる。凍結箇所があり滑らないようにここでも気を使うことである。奥の院の参道まで歩き、摩尼山、楊柳山、転軸山と回るつもりであったが、市街地の交差点で右に曲がるところをうっかり左に行ってしまったために、転軸山から登ることになってしまった。まあそれでもよい。
 転軸山森林公園に着いて登山口がどこだかわからなかった。そもそも、ここまで来た道そのものが地図に印のあるのと違っていたことに後で気がつくのだが、僕自身はそうは思っていないから錯覚を起こしてじつは逆方向に歩いていたのだった。適当なところで山道に入った。尾根まで出れば本道に合流するだろうとたかを括っていたのだ。山道に入るとアスファルト道と違い雪はきれいに解けていた。土のほうが地熱のせいか解けやすいのだろう。
 で、尾根に上がると、さほど踏まれた気配もないけれど一応道は付いている。それに従うと電波塔に出た。その先はと言えばどうもしっかりした道ではない。やれやれ、引き返そう。吐く息はまだ白かったけれども、風も無い穏やかな日よりである。
 
 森林公園入口まで戻り地図を横にしたり逆さにしたり、標識と照らし合わせてようやく自分の位置が確認できた。
 多目的広場まで来る間に民家の犬に吼えられてしまった。

10:15
 池の横から山道に入ると「高野七口女人道」の道標があった。やれやれこれで間違いない。

この道標を見てやっとひと安心 転軸は天竺なのかな?

10:35
 ほどなく転軸山山頂。祠があった。右にしっかりした道が見える。祠を背にして切り株に腰掛けて一本。次は楊柳山だ。

11:00
 その道をすたこらと下り、平坦な道を小気味よく歩くと目前に大きなお寺が見えた。

御廟


 「さすがに高野山。こんなところにも大きなお寺がある」
 お参りの人も数人いる。道はちょうどお寺の裏になっていたから表に回ると、
 「あれ? これって奥の院とちゃうの? あれ? なんで?」
 僕はまるで狐につままれた気分だった。不思議でしようがなかった。なんで楊柳山、摩尼山へ行けなかったのか? 途中で分岐を見落としたのだろうか?

 時間はまだまだあるから地図を見直して摩尼山へ向かうことにする。
 参道を少し出たあたりだった。おじさんに「摩尼山か?」と聞かれた。「はい」「初めてか」「はい」
 親切にわかりやすい道を教えていただいた。幅広の砂利道から行った方がよい、と。

11:20
 そこには某大学の「摩尼山登山口」の道標もあった。「もう大丈夫」
 その砂利道をまたもやすたこら歩くと、アスファルトの大きな道に出た。「あれ? ええんかなぁ・・・。途中に分岐があったんとちゃうかな?」
 地図を見れば、どうやら見落としているらしい。

11:50
 引き返そうかとも思ったが左へ幾分登ると「摩尼山登山口」があった。
 「ふう、やれやれ」
 そこから登り、摩尼峠まで来ると左からの登山道と合流した。やっぱり見落としていたのだ。ずいぶん遠回りしたことになる。

12:20
 摩尼山山頂。ご夫婦が昼食を終えられた頃だったか。
 この摩尼山からすぐ目前に楊柳山が見える。ピラミダルなとんがりだ。先週、町石道からも同じように見えた。
 僕もシートを出して昼ごはん。8時から4時間歩き詰めだった。

摩尼山山頂 摩尼山から見た楊柳山


13:15
 いったんぐっと下り、今度はぐっと登る。登り詰めたところが楊柳山だった。
 やれやれ、けっこう行き当たりばったりの山歩きだったけれど、これでなんとか三山を登ったことにはなる。

楊柳山山頂と穏やかな女人道


 それにしても、転軸山からなぜ奥の院へ行ってしまったのか腑に落ちない。
 楊柳山から下ると穏やかな道が続く。
 アスファルト道に出た。きっとこれが奥の院横からの道かと思われた。右はすかいに転軸山への道標があった。朝登ったのとはまた別の道である。時間はまだある。もう一度登ってみよう。

14:10
 山頂に着くと、「あらあら」。祠の裏に出たではないか。なんとまあ、二本の道が付いていたのか。
 朝は祠を背にして切り株に座った。目の前にしっかりした道があるのだからそれとばかり思い込んでいたのだった。写真のようにちゃんと赤で矢印があるにもかかわらず無頓着に下ってしまったのだった。

転軸山から出ている二本の道


 もう一度、奥の院まで下ってもよかったが、朝、森林公園に来た道も、地図にある道ではなかったから「一の橋」へ行く道をたどっておいたほうがよさそうだ。
 森林公園へ戻り、中之橋霊園の横を通る。地図では、霊園事務所のそばからアスファルト道を右に「木目調の小橋を渡る」とある。で、それがあった。古いお墓の間を抜けるとほどなく奥の院への参道に出た。「これやったんか」。やっと納得。

14:55
 全国のと言っていい武将の墓などを横に見ながら、参道を一の橋へ。
 
 帰りはバスに乗るつもりだったが、意地になって、極楽橋まで歩くことにした。
 大門への分岐を右へ。それから、朝間違えた交差点に出た。「そうそう、ここを向こうへ行ったんだった」

15:25
 女人堂で無事に行って帰ってこれたことに礼のつもりで手を合わせ、極楽橋まで下った。
16:10
 極楽橋着。さんざんな、いやさんざん楽しめたと言っておきたい、今年の納めの高野三山であった。やれやれ。