もうちょっとで高塚山だつたのに、の巻 (Jan.25, 2004)

 前日の土曜、国道169号線を走った友人によると凍結はないとのこと。
 もちろん、車の数も格段に少なく、かつ日陰もある林道はその限りにあらずだが、行けるところまでのつもりで、西原から高塚山へ行ってみよう。

 「ここは西原」の看板が見えるとすぐ右へ、はすかいに車を入れる。
 まだ民家の中だ。さいわいに日当たりがいいせいか雪はない。この道で間違いはないと思うが、たまたま通りかかったおばさんに聞いてみる。
 「すぐ上で通行止めになってるよ」
 林道が決壊して工事中なのだ。

08:50
 広い駐車スペースに停めさせてもらい、山靴に履き替え、スパッツをつけ、では、行くか。
 ひょっとすると雪で入れないと思っていたから、林道歩きも予定のうちだ。
 日当たりのいいところには雪はまったくなかったが、15分後、谷を渡る橋を境に一面の銀世界になった。踏跡もない。
 林道は湾曲しつつ高度を上げるにしたがって雪はさらに深くなった。

ここから山道 モノレール


09:30 林道終点。
 ここから山道になる。雪の上だったが、道はなんとなくわかる。なんとなくわかったつもりで登っていくうちにどれが道だかわからなくなった。テープはあり、それに従ったつもりでいたがそれは登山道を示しているのではなく、山林主のテリトリーを示していたのかもしれない。とにかく道らしくないところにもそのテープがあった。しまいに谷の上を巻くような道のようなそうでないようなところへ行きかけた。
 「こらあかんで。これとちゃうわ」
 引き返し、道らしく見えるところを右往左往して、結局、林業用のモノレールに沿うことにした。かなり急登ではあったが、これに沿えば間違いなく上へ行ける。
 地図を見ると、尾根に沿って稜線へ出るとそこがp1194、高塚山へはその稜線に沿えばよい。稜線に出るまで、つまりp1194までがひと仕事。稜線に出ればあとはスムーズではないかと思われた。p1194まで出たら高塚山まではそう時間もかからないだろうから、できれば先まで、例えば三本栂か、奥駈の一のタワまで行ってみようかなどと能天気なことを考えていたのだ。
 それにしてもきょうはなぜか息遣いが荒い。

 モノレールの終点を過ぎるとやたら深い吹き溜まりに足を取られた。思いっきり引き上げると腿がつりそうになった。
 ほどなく稜線に出る。

ちょいお気に入り p1194から


10:50 たぶんp1194だ。
 稜線上は風が通るから雪はむしろ浅い。「ほらね」なあんて歩きかけるとあちこちに吹き溜まりがある。急登になるとさらに深くなった。
 「あらあら、ワカンをつけんとあかんわ」
 急登を登りきって風裏でワカンをつける。手袋を脱ぐと指先が雪に触れ冷たい、冷たい。
 なんとか履きはしたもののピシッと締めてなかったのかすぐグズグズになってしまう。

最初のピーク。大台方面が見渡せた 二番目のピーク
三番目のピーク。たぶん。 絶対にここが高塚山だろうと思っていたのに


 高塚山へはさほど時間はかからないはずだとまだ思っていて、
 「次のピークがそうかな?」
 なんて思いながらいったいいくつ無名のピークを過ぎたことだろう。
 改めて地図を見ると稜線上には小ピークが五つほどあるようだ。
 しまいに風が出て風花が舞った。横殴りの風である。
 「きっとこの上が高塚山だろう」と思われる急登をぜえぜえ言いながら、雪に足を取られながら登るとここにも山名板がない。時刻は12:40。
 あらあら。登りは4時間と決めてきたのにまだ山頂に着かない。まだ先により高そうなピークがある。たぶんあそこだろう。
 しばらく歩いてはみるものの、しっかり雪の付いた急登を見上げると、
 「こらあかんで。この雪ではどのくらい時間がかかるものやら。帰りのこともあるから深追いは禁物だ」

向かいの高まりこそ、高塚山だと思われる

12:50 結局、
 「距離的にはあとわずかだとは思うけれども、ここは潔く撤退しよう。もうちょっとで高塚山のはずだけど、まあ仕方がない。また来ればいいのだ」
 そう思って踵を返したのであった。いまひとつ体調が思わしくなかったのか、まだ昼ごはんを食べていないせいでシャリバテだったのかもしれないが、風のある稜線上ではとてもその気にならない。
 下りは案外早く、13:30には稜線から少し降りたモノレールの終点に着いた。適当なところで昼ごはん。
 巻き寿司、お稲荷さんに熱いお茶。ほんのわずかの間だったが指先がしんしんと冷たくなった。半生の醤油餅もあったし、パンもあったけれど、食べる気にもなれなかった。
 再び手袋をしてモノレール沿いに下った。

14:40 眼下に林道が見える頃、すっかり曇ってぼたん雪が舞っている。
 ぼたん雪だから積もることはないけれど、ぐずぐずしていたら気温が下がって積もらないとも限らない。撤退してよかったと思う。

林道に出て振り返る ほの白い太陽


14:45 林道に出る。あとは気楽なものだ。口を大きく開けてぼたん雪を捕まえようとするが、なかなかうまくいかない。上着にはいっぱい積もってくるのに、不思議だ。
15:15 車に戻った。山を見ると雲のベールを通して太陽の光がうす白く見えた。

 帰途、雪は降り続け、国道169号沿いは全山雪化粧だった。