三本栂から奥駈、一のタワ (Mar.13, 2004)
小谷林道に入ると「やっぱり」ゲートは閉じていた。
「仕方がない、別の山へ行こう」
と、Uターンして一つ目のカーブを曲がったところで、いったん車を停めて地図を見る。
「そもそも、ここはどの辺や?」
橋を渡って小谷川の東にいる。
「なるほど、ここか…。次回来た時ゲートが開いている保証はない。林道を余分に歩くことになってしまうけれども、車自体どこまで入れるか定かではないのだから、せっかくだしここから歩いてみるか」
再びゲートに向かう。
08:00 ゲート横に駐車。
08:10 「行けるところまで行ってみよう」
見上げるとうねうねと林道が登っている。げんなりしてしまうが時間に身を任せるしかない。山靴をドタドタさせながら歩き始めると、目の前で落石だ。
「危ない、危ない。車で走って落石に遭ったらえらいこっちゃ」
上を見上げると猿が三匹くらい見えた。
「あいつらが落としてたんか」
ずいぶん以前のことだが、和歌山姉妹が、「龍神スカイラインを走ってると崖の上から猿が石を落とすんや」って言ってたけど、そのときは半信半疑だった。
林道はぐっと湾曲して高度を上げ、先ほど猿が見えたところに近づく。一匹の猿が林道を横切ってカーブを曲がって行った。
西山観音への分岐を過ぎて、さらに登ると上から犬の鳴き声だ。
「野犬か?」
犬は苦手だ。小さい頃二度噛まれたことがある。数年前友人宅で、頭をなでてやろうと手を出したら噛まれてしまった。
「困った。どうしたものか」
カーブを曲がるとその犬が待っていた。首輪をしている。
じっと犬の目を見ながら徐々に登る。吼えはするけれど向かっては来なかった。じっと目を見ながら少しずつ近づく。噛みそうにはなかったから知らん顔をして過ぎて行く。
近くに徳島ナンバーの軽トラックが停まっている。
「あれ? ゲートは閉まっていたのに。どうやって入って来たんやろ?」
持ち主は見当たらなかった。犬もこの車の持ち主の飼い犬にちがいない。
「猟か?・・・林道を歩いててテッポで打たれたらかなんなぁ・・・」
ほどなく去年車を停めたところを過ぎた。と言うことはもうすぐコクワ谷小屋だ。
09:00 そのコクワ谷小屋が見えた。ここから山道に入っても良かったけれど、今回は林道を歩くことにする。そっちの方が早そうだし、林道の状態も見ておきたかったからだ。
林道は落石の巣もあれば、日陰には締まった雪が残っていた。
もうだいぶ登ってきた。気持ちいいほどの好天である。
すぐ前に稜線が見えるけれども林道は何度も湾曲を繰り返し、少しも近づかない。いい加減うんざりしてしまう。
稜線と林道との出合 | 三本栂 |
10:10 延々と歩いてやっと稜線にたどり着く。ちょうど二時間かかった。
正面に仏生が見える。孔雀のトサカの左に釈迦。木間ごしに右にたどると八剣が見える。 一本取って、ようやく山道を歩く。
10:35 三本栂。ここまでは去年来た。
ここから初めての道だ。
p1418から右の高塚山への稜線が見える。
p1418 | p1418から奥駈への稜線 |
11:05 p1418。ピークはクラになっていた。いったん戻って下を巻く。
ここから奥駈への道は静かで落ち着いた道だった。徐々に雪が残っている。
左に八剣、弥山。右に大普賢が見える。
12:05 ぐっと登ってついに奥駈道に合流。
「ふう」
大普賢 | 弥山、八剣 |
稲村、バリゴヤの頭 | 鉄山 |
雪は格段に増えて、なぜか南側に多く付いてた。きっと北風に煽られて南側に溜まったのかもしれない。
この合流点はやや小高くなっている。大普賢、稲村、バリゴヤの頭、鉄山、弥山、八剣と見渡せた。
一のタワ |
「一のタワで昼ごはんにしよう」
天ヶ瀬の分岐の手前あたりだったか、灰色のずんぐりした生き物が目の前を横切った。
「熊か?」
立ち止まってじっと見るとイノシシだった。
「だよねぇ、熊だったらもっと黒いよね」
12:15 避難小屋に着く。一のタワである。
雪を避けて岩に腰掛け昼ごはん。
さすがに弥山はどっしりとしている。奥駈から弥山への北斜面にはまだまだしっかりと雪が残っていた。
12:40 分岐に戻り、先ほどの道を引き返す。p1418はクラになっていて下を巻くから、正面の高まりをぐっと右へ巻いて尾根に乗りぐんぐん下るうちに、
「あれ?この道通ったかな? こんなに急だったかな?」
少し不安になってきた。左に見える稜線が高塚山へのそれなら間違いではないのだが・・・。
「いったん戻ろう」
ふうふう言いながら登り返すと雪の上に僕の踏跡があった。ピークは1418ではなかったのだ。危うく別の尾根を下るところだった。忠実に稜線に沿えばいいものを生意気するからこんなことになるのだ。
13:25 p1418。
14:00 林道との出合。
あの林道を歩くのは気が引けたから下りは大栂山を通ることにしよう。
p1219を経て稜線に沿うとすぐ下に林道が見える。山道は何度かこの林道と出合った。まるで吉野の青根ヶ峰から百丁茶屋へ行くときと似たような感じだ。
仏生、釈迦ヶ岳 | 大栂山 |
14:40 大栂山。あいにく展望はなかった。
林道を歩いていると、左に山道が下っていて、赤テープに「シカ」とマジックで書かれてあった。何のことかわからない。林業用語なのだろうか? ここを下ったほうがいいのかどうか定かではない。下れば、朝の林道のどこかには出るものと思われたが、いま歩いている林道を歩くことにする。
モノレールの終点があった。
「そういえば朝の林道に始点があったぞ。これに沿えばあそこへ出るのか」
これに沿って下りようかとも思ったが、結局このまま林道を歩くことにする。
ついにこの林道も途切れてしまい、先は細い山道が下っている。これが地図にある破線かどうかは定かではなかったけれど、もうこの道しかないのだから委細かまわずぐんぐん下ると、西山観音のわずか手前に出た。
「なんだ、これで良かったんじゃないか」
くたくたになって、またもやうねうねと湾曲する林道を歩いたことである。
15:50 林道ゲート着。