乗鞍岳から武士ヶ峰 (Aug.7, 2004)
乗鞍岳山頂 |
「星のくに」から、「天誅組本陣遺跡」の看板のある林道へきゅっと入り、「登山口はどっかにあるだろう」「まだかまだか」と走らせるとあったあった。道路も少し膨らんでいて側溝ぎりぎりに停めて山靴を履く。
ただ、ここが地図上のどこであるかは見当が付かなかった。
08:20 登山口
ややガス模様。山道はあんまり人が入らないせいか、木の葉や生い茂った夏草で覆われている。あっという間にズボンはぐっしょりと濡れてしまった。
尾根を歩き、巻き道を歩き、平坦あり急登あり。
08:40 乗鞍岳
笹を掻き分け掻き分け |
あらあら。もう着いてしまった。わずか20分ではないか。
大日山はどっから行くんだろう?
よくわからなかったが、どっちにしても武士ヶ峰まで行くつもりだったからそっちを先に行くことにする。この稜線に沿えばいいはずだ。
乗鞍岳からかなりな急斜面を下る。登り返すのが大変だ。
稜線上に笹のブッシュである。背丈以上もある。かき分ければどうやら道はある。がさがさと入り込むしかない。
熊はいないだろうが、こんなとこでヘビにでも出遭ったらだうしやう。
雨のおまじないに500円の透明傘をザックに差してきたけれど、このくるんと曲がった取っ手が木の枝にひっかかる。
とうとう、ザックから抜いて杖代わりに使うことにした。
道は先ほども書いたように平坦あり、急登あり。道には新しい踏跡がないでもない。
だが人の足ではない。鹿かとも思ったがそれにしては付き物のコロンとした糞がない。
どうやら猪ではないかと思われた。
道は稜線の南側が自然林、北側が杉の植林帯になっている。
たぶん登山者によるものと思われる古い赤テープもあった。
いくつ目かの急登をピークに出ると、そのテープが左の稜線へ続いている。右にも尾根があり、地図をみるとこの稜線から南へいくつかの緩やかな尾根が派生しているようだ。
「ここは間違いやすい。帰りに気をつけなければ」
朝、PCを置いている机に赤テープがあったのに、低山だからという気の緩みであろうか、持っていくことさえ思いもしなかったが、初めての山だ。やはり携行すべきだったか。
ガスに濡れたズボンもいつのまにか乾き、今度は汗でぐっしょり濡れてしまった。
しかし、やはりこの汗がいいのだ。
武士ヶ峰へはいくつかの小ピークを過ぎ、地図ではp1007.5を巻くと茄子原からの登山道と合流し、武士ヶ峰へ向かうようになっている。
武士ヶ峰北峰 |
目前のピークに直登の踏跡があり、巻き道もついていた。これがそれかどうかは定かではなかった。p1007.5は、もうひとつ向こうの山だろうと思っていたからだが、間違っていても稜線へはすぐ登れるから、その巻き道を伝うと、別の尾根からの道と合流した。
「なんだ、思ったより早そうだ」
せっかくだからとp1007.5に登り、そこから武士ヶ峰方面へ稜線を伝うと、ほどなくかすかに記憶のあるピークに着いた。
10:20 武士ヶ峰北峰
この三月、西ノ谷林道から登ったことがある。やはりここが武士ヶ峰北峰に違いないだろう。山名板はなかったが地図的には間違いない。これまた思ったより早く着いた。
あの時、南峰へ行くつもりでどこで間違ったのか奇妙なことに林道まで下ってしまった。もう一度確認に行こう。さいわい晴れて視界も利く。
と思いながら稜線を歩くと、山頂部の広い端っこ、つまりそこからがくんと下るあたりにもはや読めないし半分に割れた山名板らしきものがあった。
「これが南峰だろうか?」
ピークと言うより山頂部の端っこであり、地図には?が付いていたけれども、南峰が北峰よりわずかに高いことになっている。ここは北峰よりやや下っているはずだ。
「うーん、どうもよくわからん」
いずれそれは、光流寺から尾根をたどってもう一度来てもよい。
再び北峰に引き返し、乗鞍へ戻る。
往路では、初めての道であるし、稜線を外さないように、倒木をまたぎ、ブッシュをかき分けたけれど、帰りとなるとつい先ほど歩いてきたのだからと少し大胆になりやや下の巻き道らしきものを通り適当なところで稜線に戻る。
かなり気をよくして、あれやこれやと空想に遊んでいるうちに、
「あれ? どっちやった?」
まっすぐ尾根沿いの道ではなさそうだ。ここは右に下るはずだ。
かなりの急斜面ではあるが、たしかそんなところもあった。そう思ってぐんぐん下るうちに道がなくなった。
「あれ? これとちゃうってことはさっきの道をまっすぐか?」
仕方がない、見上げるほどの急斜面を登り返す。途中に巻き道があった。ふう、ありがたい。巻き道に沿って適当なところで尾根に上がり、かすかに道らしいし、テープは見当らなかったし、記憶にもなかったけれど、先ほどの下りが違うのだからこれしかないと、これまたぐんぐん下った。
が、やはりどうもおかしい。先に乗鞍岳が見えないのだ。やたら下るだけなのである。
やっぱ、おかしい。
腹も減ってきたし、一本取ろう。
パンを齧りながら地図を見ると、どうやら朝、間違いそうと思った尾根に入り込んでしまっているようである。やれやれ。
判然とするところまで引き返す。これが鉄則だ。
引き返すと左に稜線が見えた。そうや、あれや。
わかりにくいが左はX、右が○ |
その分岐になっているピークまで引き返すと、たしかに左へぐっと下るけれど道があり、テープもあった。
まずはひと安心。ここでも一本。ペットボトルのお茶が残り少なくなってきた。
次の小ピークにヘビがいた。
しっぽをビリビリと音をさせながら警戒している。色は茶色の亀甲文様。どうやらマムシではないか。
向かってきそうな気配はなかったが、すぐそばを通る勇気はない。だいいち足がすくんでいる。
どっか行って欲しいが直ぐには動きそうもない。
足元の石を投げつけた。ピクッとはしたがそれでも逃げない。もうひとつ投げつけた。
ようやっと日陰の方へずりずりと行ってくれた。甲羅干しをしていたものかと思う。
笹のブッシュをかき分ける。
乗鞍への最後の急登では、三度ほど立ち止まって息をついた。
13:35 乗鞍岳通過。
13:55 登山口
あとは扇形山と高城山の間を歩けば、大峰山系とこの西吉野への山域とが繋がる。
まあ、だからと言ってそれがどうしたって話だけれど。
林道から大日山への入口もだいたいわかった。さほど時間はかからなさそう。
だが、靴も脱いだことだし、もはや、豆腐に酒モード。いずれということにしとこう。
帰りは西吉野村の豆腐屋さんに寄り、喉の渇きを辛抱しながら一目散に帰宅し、腰に手をあてて麦茶をぐっと飲んだあとシャワー。
それから土しょうがをおろし、豆腐を半分に切り、鰹節も乗せた。
グラスに氷をぎりぎりまで入れ、泡盛をつぎ、水も少し入れてからからとゆすった。