山ノ神ノ頭とワゴナーズ・ヒッチ(May 28/29, 2005) |
焼酎も飲みすぎたら翌朝に残る。脳みそが風船のようにふわふわする。
大所帯だからゆったりしたペースのしかも最後尾。
山ノ神ノ頭は、三之公林道の終点から左の階段を馬ノ鞍峰へ登り大台ヶ原へ縦走したとき通ったと思うが、今回は林道終点から沢を対岸へ渡ったところから直登ルートを登るのだと言う。
僕は初めてなので楽しみにしていたが、昨晩の飲みすぎが祟り、小休止の時、ようようみんなに追い付くざまである。いくつかの小ピークを越えるけれども、内心「あれか? あれか?」の心境だった。
ブナの大木 |
とはいえ、道中、ブナの大木あり、おそらくこれで終わりかと思える石楠花が咲き、Nの字に曲がったヒメシャラの木あり、満開のシロヤシオありで、この道を知ったのは何よりの収穫だった。
歩きながら、昨日、旅人さんがあっと言う間にワゴナーズ・ヒッチを結んでいたのを思い出していた。
「あれえ〜、あっと言う間ですやん。もう一遍やってみて」
所作は変らない。同様にあっと言う間である。
「へえ〜、すごいね〜」
それも僕が見ていたテキストとは異なる手順なのである。けれども出来上がりはまちがいなくワゴナーズ・ヒッチなのである。
じつは、ここ一週間、教科書(羽根田治『ロープワーク・ハンドブック』山と渓谷社)を見ながらロープの結び方を稽古していたのだ。
ボーライン(もやい結び)、フィッシャーマンズ・ノット(テグス結び)、フィギュア・エイト・ノット(8の字結び)、ハーネス・ループ(よろい結び)、ツー・ハーフ・ヒッチ(ふた結び)などなど。
図を見ながら、ああでもないこうでもないを繰り返しながら覚えていった。
覚えたとは言うものの、結ぶ状況が異なればどうやっていいのかわからない。まだまだだ。習うより慣れろ。いろんな状況の中ですぐさまその結び方ができるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
そのテキストを見ていると、ワゴナーズ・ヒッチ、トラッカーズ・ヒッチと言う車の荷台をしっかりと結ぶ結び方も図示されていた。
その図を見ながら、僕はふと子供の頃を思い出していた。
もう、40年くらい前になるだろうか。米俵や、藁を軽トラックの荷台に積み、父がロープで縛る。輪を作り、それからどうしたのかロープをぐっと引っ張るとギュッギュッと締まるのだ。見ていてなんとも小気味良かったし、とてもかっこよく見えたのである。
ひょっとすると、このどちらかの結び方ではなかったか。かなりややこしそうな結び方に見えたし、山で使うことはまずないだろうからと後回しになっていたが、今回の山行の前日、やっとそこまでたどり着いた。
【ワゴナーズ・ヒッチ】
輪を作り、そこにまたロープの輪を入れ、下にできた輪をぐるっと捻じり、その輪にロープを入れこれも輪の状態でフックに掛けて、ロープの端をぐっと引っ張る。
そうそう、これだ。父がやっていたのはこれだ。
【トラッカーズ・ヒッチ】
輪を作り、一回転捻じりその輪にロープを通し再び輪を作る。ロープをフックに掛け、ロープの端をその輪を通してぐっと引っ張る。
これも、見たような気がする。
両方とも、面白いようにロープが締まっていく。
そうか、これだったのか。
僕は40年前の父に再会したような気分だった。
40年経ってやっと父に追いついたのだ。
父はそれをどこで覚えたのだろうか。農家であれば、誰でも知っておくべき必須の事柄だったろう。友達からあるいは寄り合いのとき覚えたのかもしれない。
旧制中学を出て、志願して予科練に入隊した。そのとき覚えたのだろうか。
昨年末、鹿児島に出張したとき、鹿屋の航空基地史料館へ行ってみた。母にその話をすると、父と一緒に行ったこともあるのだと言う。まず鹿屋に配属。青島で終戦だったと言う。
いつかの法事のときだった。
「青春時代を戦争に取られ、帰ってからは高度成長期、働くだけの人生だったんじゃないかな」と言うと、父の同僚が「そんなことはない、みんな楽しみを見つけて遊んできたんだ」と言った。
小学生のときだった。宿題で「やじろべえ」を作らなければならなかった。工作は苦手だったから、作っていない。作っていないのに取りに帰らされた。帰ると、父は海苔の網の繕いをやっていて、理由を話すとすぐ作ってくれたが、げんこつももらった。
シロヤシオ落花 | 山ノ神ノ頭 |
下山 |
右に左にシロヤシオが満開。
先を行く円さんが、「着いたでぇ〜。山頂やでぇ〜」
ここには記憶がなかった。
縦走路はどうやらやや下を通っているようである。
柿の葉寿司をいくつか食い、下山。
馬ノ鞍峰へ縦走する、森の音さん、どんさん、春風亭とはここで別れた。
panaちゃん:春の円遊会&「山の神の頭」 2005.5.28〜29
円さん:山ノ神ノ頭
HAMAさん:台高 山の神の頭
どんさん:シロヤシオ咲く山ノ神ノ頭、馬ノ鞍峰縦走
DOPPOさん:No,445 三之公から山の神の頭へ―台高山脈ど真ん中
森の音さん:山ノ公から山ノ神ノ頭、馬ノ鞍峰へ
milionさん:山ノ神の頭(台高)を歩く
ピッケル君:山ノ神ノ頭