祖母山・傾山縦走 (May 2/4, 2006)

 このGW、法事のために帰省することは早くから決まっていて、1日、2日に有休を取れば9連休になる。せっかくだから郷里の山を歩こうと、ネットで知り合った山さんと祖母山・傾山を二泊三日で縦走することにした。地図を見るとかなりの長距離だ。
 予定は、
・建男社から上畑コースを前障子、大障子岩を経て祖母山へ(九合目小屋泊)
・祖母山から古祖母山、本谷山を経て九折越小屋へ
・九折越小屋から傾山、三ツ坊主を経て三ツ尾コースを下山

5月2日(火) 朝5時、熊本市内で待ち合わせて山さんの車で登山口へ向かう。阿蘇を抜け、竹田から南へ。
 建男社の駐車場を出たのが07:20頃だったか。
 登山口が標高350mくらいらしい。1409.2mの前障子までおよそ1050mの登りである。案外これがまずきつかった。

石楠花 アケボノツツジ

 道中には石楠花が咲き、アケボノツツジが咲いている。
 アケボノツツジとは近畿ではどうも聞いたことがない。無粋な僕にはアカヤシオのようにも見える。どうやら変種のようである。
 大峰・台高ではアカヤシオの後にシロヤシオが咲くけれど、山さんは、九州ではシロヤシオは見たことがないとおっしゃっていた。

 前障子が近づくといくつかのとんがりのある大障子岩が見え、また明日歩く、古祖母山から本谷山を経て傾山への稜線が見える。雄大だ。しかし、長そう・・・。
10:40 前障子。
 岩を掴みピークに登った。
 大障子岩と祖母山が見える。

前障子から、大障子岩、右奥が祖母山

 縦走路に戻って岩場を巻くけれど、次の大障子岩は1451mだから標高差はたいしたことはないのだが、岩場の下をかなり下る。下ってとんがりの鞍部に登り返す。これをいったい何度やったろうか。途中で心臓が破裂しそうになった。標高差以上のきつさだった。
 僕はそれほど足は早くはないが、地図にあるコースタイムはどうやら健脚者向きのタイムのようにも思える。前を行く山さんに何度も待ってもらう始末である。
 初日からいきなりの核心部だった。
13:05 大障子岩。
 そうか、岩場が衝立のように立っているから障子の名が付いているのか。

15:50 池の原展望台
 地図を見たくらいで、予備知識もなかったが岩山であることにようよう気が付いた。
16:20 宮原
 ここを過ぎてガスが出てきた。

池の原展望台より 縦走路

17:40 祖母山九合目小屋
 ふう、およそ10時間だった。
 すぐ近くに水場がある。
 小屋は10人程度だったか。ゆったりとスペースが取れた。毛布付きで2000円なら悪くない。しかも電気も点いている。
 山さんは鍋の食材を。山中で生鮮食料が食えるのは何よりありがたい。でもずいぶん重かったことだろう。焼酎を飲み、あれやこれやと話題は尽きない。
 消灯は何時頃だったろう。テーブルの上はそのままに即爆睡。

5月3日(水)
 五時過ぎに起床。
 ラーメンを食い、小屋主さんに展望のポイント、および縦走路上の水場をお聞きする。
06:20 小屋発。好天だ。

祖母山頂より縦走路を。ここからいったん岩場をがくんと下る。左奥は古祖母山。

06:45 祖母山山頂。
 登りはどうと言うこともなかったのだが、下りになると岩場の連続だった。危険箇所にはロープもありハシゴも付いていたが、落ちれば遥か下の谷である。いささか緊張した。
 障子岳への稜線からは西の阿蘇側にも展望が開け靄ってはいたが根子岳が見えた。
 そうそう何度も来れるところではないからと、天狗岩に立ち寄った。展望抜群。山さんは、天狗のアゴと言われるもうひとつ先の岩場へも行ったことがあるとのこと。
 かなり健脚の人である。
 途中で水を補給。

祖母山の下り 祖母山を振り返って

08:45 障子岩
09:50 古祖母山
 高千穂方面の里が見える。

 尾平越への下りから本谷山への登りは穏やかで、アケボノツツジ、ブナ林などを眺めながら歩いた。
11:05 尾平越
 大きなブナの木のあるキャンプ適地で水を補給。
 本谷山手前のピークで昼食。

水場へ下る地点 青空にアケボノツツジ

14:05 本谷山
 少し下ったところで水を補給。
15:35 笠松山直下の巻道で一本。

縦走路

 木間越しに傾山が見える。
 僕はなぜか南アルプスの塩見岳に似ていると思った。

傾山

 地図では九折越小屋まであと50分とあるが、すでにここまで9時間を越える行動。足の裏が痛くなってきた。小屋は小ピークを越えた向こうにあるらしい。
 ひとつ越えてもうひとつ越えたか? 緩やかに下ると山さんが立ち止まっている。
 「ん?」
 と前を見ると、そこに小屋があった。なぜかいつも突然に終わりが来る。
16:45 九折越小屋。
 すでに15人近い人たちが陣取っていた。僕たちもとりあえずスペースを確保して水場へ向かう。テント場にも数張り。水場はそのテント場を抜けて80mほど下るらしい。これがまた長いのだ。
 飲んで晩御飯のあと、外へ出ると三日月に満天の星だった。
 焚き火に当たらせてもらいながら数人で長話が続く。

5月4日(木)
 いよいよ最終日だ。
 6時過ぎに小屋を出た。

向こうの稜線が祖母山へ。手前の稜線が本谷山から傾山へ。

 前傾からいったん鞍部に下って本傾に登り返す。

傾山山頂

07:25 傾山山頂。
 祖母山、傾山の縦走路は奥岳川の谷を挟んでU字になっている。
 初日に伝った祖母山への稜線が奥に、きのう歩いた傾山への稜線が手前に見える。尾平越あたりには雲が付いているようだ。

 下りの三ツ坊主は、大障子岩と同じくいくつかのとんがりがある。大きなとんがりは三つかもしれないが実際には六つくらいあるのではないか。
 難所があるらしい。垂直の岩にロープが付いていてそれを下らなければならない。
 僕は高所恐怖症だ。なんと言うこともなく先に下りた山さんの手前、ここで引き返すわけにもいかず、へらへら笑いながらロープを掴むけれど、足の置き場が見づらいのだ。わずかの出っ張りに足を乗せてようよう下る。
 「第一関門突破です」
 「まだあるの?」
 
 ふたつ目は垂直の岩の間を同じくロープを掴んで下るのだが、外側は谷だから岩の間に入ろうとしてしまいザックが挟まって身動きが取れない。
 「あらあら」
 体を揺すってようやく狭間から抜け出たことである。ほかにも緊張箇所があったが無事通過した。キレットもいくつもあった。

観音滝

10:40 三ツ尾。
 急な下り、足の裏が痛くなった。
11:40 林道を横切って観音滝の落ち口で一本。タオルを濡らし顔や手、腕をぬぐう。まるで真夏の気候だ。
 滝は落差75mと言う。
12:50 そうしてついに駐車場のある登山口に着いた。
 大峰・台高をそれなりに歩いてきたつもりだったが、この祖母山・傾山系はまた異なる味わいだった。
 僕たちは、固い握手を交わした。
 山さん、ありがとうございました。