越百山から空木岳へ (Aug.5/6, 2006)

 週末はずっと出ずっぱりだったから休養に充ててもよいし、遅い梅雨明けだったから好天なら遠出もしたいし、一泊二日で、北アルプスの某コースにしようか、中央アルプスの越百から空木(あるいは、逆コースの空木から越百)にしようかと、決めかねていた。

 D氏は駒ヶ根から池山尾根を空木へ。翌日中央アルプスを北上し宝剣から三ノ沢岳への予定である。

 とくに誘うと言うことでもなかったのだが、どんな予定なのかな?くらいの軽いノリでピッケル君にメールを書くと、彼もまたどこにしよう?とハムレット君だった。(^O^)
 で、何度かの逡巡の後、僕は標記のコースを行くことにして、もし、ハムレット君も行くのであれば車二台で行くより一台で行く方が経済的だから、待ち合わせて同行することにした。
 お忙氏のP氏、当日も出張があり、帰りが遅くなるため、どちらへ行くか、決めかねている風情だった。僕の方が時間的には余裕があったから、針インターで仮眠しているからどちらにしてもレンコウ、と言うことで僕は22時ごろ針インターに着き、少しでも睡眠を取っておこうとシートを倒した。
 ここしばらく不規則な睡眠時間だったのだ。帰宅して焼酎を飲む。成り行きで寝てしまう。一時に、二時に、三時に目が覚める。すると再び眠れないまま朝になる。いつもより早く出勤。そんなことが続いて体内時計が狂っていたのかもしれない。

8月5日(土) 
00:30 窓を叩く音で目を覚ました。
 「よお」
 P氏の車で行くことにしてザックそのほかを移し、名阪、東名阪、名古屋のややこしい連絡道を抜け、中央道。中津川で高速を降り、三時過ぎ、中津川ダム手前の適当な空地で再び仮眠。ピッケル君、後部座席を倒してバッチリ寝れるようにしてくれていた。
 「めっちゃええやん」
 ここでも二時間以上眠れたのである。だから遠出で五時間は眠れているのだから御の字のはずなのである。

 五時半起床。おにぎりを二個食い、中津川ダム奥、ゲート手前の駐車場へ。
06:45 では、行きましょう。
 林道をさくさく歩く。快調の部類と言えなくもないのだが、何か眠気が残っている。
07:30 南駒ヶ岳への分岐を右に取り越百へ向けていよいよ山道へ。左太ももに力が入らない。
08:10 「下の水場」の少し上で一本。
09:00 「上のコル」の手前で一本。
 地図の標準タイムと見比べていたP氏は「順調です」と。ところが僕は眠たくてぐったりしていた。目を閉じれば眠ってしまいそう。いつだったか、D氏、RINちゃんと鳥倉林道から三伏峠に上がり南アルプスを縦走した時のことを思い出していた。まさに同じ症状だったのである。
 途中休みを取りつつ、
10:10 「上の水場」
 駐車場でお会いした御二方、「ここの水は美味しいですよ」と。
 きょうは摺鉢窪避難小屋に泊まる予定である。水マークはないからここで汲むか、越百小屋の水場で汲むか。小屋まであと一時間ほど。ここでは道中の飲み水だけ汲むことにした。
 前後するが、でっかい御岳、その右に乗鞍が見える。御岳の左奥は白山ではなかったか。
 小屋へ向かって尾根の左側を緩やかに巻くと、谷を挟んで仙涯嶺、南駒ヶ岳が見える。

御岳山 右、仙涯嶺。左、南駒ヶ岳。


11:40 越百小屋。
 水場はどこだろう。写真ではちょくちょく拝見する小屋番氏、「越百側へ歩くとすぐ左に。高低差70m。『上の水場』で汲んでくれば良かったのに」と。
 疲労困憊の僕を見かねて、P氏「僕、汲んできますから郭公さん待ってて」なあんて、うれしいことを。

12:50 樹林帯を抜け、森林限界のあたり、あとはハイマツ帯を登るだけのところでたまらず一本。
 タイムをチェックするP氏の、摺鉢窪避難小屋着の予想タイムが、以後休むたびに刻々と後ろへずれて行くことになる。

越百山から仙涯嶺、南駒方面 越百山から安平路山方面


13:20 越百山。
 ふう。やっと稜線だ。
 おかげで好天に恵まれた。久しぶりに森林限界を超えた。
 昼ごはんを食べ、仙涯嶺、南駒ヶ岳への稜線歩きである。

越百山から仙涯嶺、南駒ケ岳へ


 仙涯嶺はピークを踏まずにすぐ下を巻いたように思う。ヘロヘロ状態であまり覚えていない。たしか三つの岩峰があった。岩峰の下部をいったんぐっと下り、南駒ヶ岳への鞍部へ登り返す。それからさらに南駒ヶ岳へと登る。俯瞰するだけで気が滅入った。かなりの標高差である。ここが我慢のしどころ。言えば、今回の核心部だったろう。

南駒ヶ岳。おそらく手前のピークを山頂と勘違い。向こうのピークが山頂。


 急ぐに急げないのだから、まあゆっくり稜線歩きを楽しもう、そんな気分である。
 越百山から仙涯嶺まで標準タイムで一時間、仙涯嶺から南駒ヶ岳まで一時間だが、さてじっさいはどうだったか。
 鞍部からの急登を無心で登る。右下に赤い屋根が見える。あれが摺鉢窪避難小屋だろう。あとわずかだ。

16:45 ようようの思いで登ると三角点があった。山名板はなかったが、「ふう、やっと南駒ヶ岳か。写真撮ろうぜ」
 越百山から三時間である。
 天気はなにやらあやしくなってきたがここまでくれば、次のピークの赤梛岳への鞍部から摺鉢窪避難小屋へ下ればいい。あとわずかだ。
 鞍部に下りると標識はなかったが右へ下る踏跡はあった。
 「ここちゃう? ちょっと見てくるわ」
 ザックを置いて踏跡にしたがうけれど小屋は見えない。ガスが出てきたせいなのかどうか。踏跡は小屋へ向かって下っているのではなく、稜線へ登っているようだ。ほかに明瞭な道はない。
 「なんかおかしいよね? 道標があってもいいし、踏跡だってもっとしっかりあるはずだし」
 腑に落ちないまま、稜線に戻り先へ進むと、ピッケル君、
17:20
 「郭公さん、ここが南駒ヶ岳でっせ」
 「はあ? なんやあ」
 僕たちはただヘラヘラするしかなかった。

 するとポツポツ。
 「郭公さん、雨でっせ。急ぎましょ」
 鞍部へ下るうちにとうとう雨具を着けた。
 鞍部から摺鉢窪避難小屋までずいぶん下る。ガラガラの道。しかも長い。
 
18:00 摺鉢窪避難小屋。
 超遅がけながらやっと着いた。きょうも長かった。逆コースの、空木から越百だったら、とてもここまで来れなかったろう。木曽殿越で泊まらざるを得なかったかもしれない。
 さいわい空いてはいたが、寝袋に包まってる人もいて、あんまり騒げない。
 こそっと、焼酎を飲み、晩御飯。
 「ほな、寝るで」

 爆睡。
 夜中に一度だけ目が覚めた。ピッケル君が言うようにたしかに誰かのいびきを聞いたようにも思うが、それも夢うつつだったか。

8月6日(日)
05:00 起床。
 晴れ。日の出は山の端に遮られた。快晴模様。携帯が通じた。池山尾根を登ったDOPPOさん、森の音さん、ハラッチさんたちは14:00に空木だったようだ。
 小屋泊まりの一人が、昨日その空木で彼らに会い、ここに泊まる僕たちに「よろしく」との伝言である。
 彼は僕たちと逆コースを、僕たちより15分くらい遅れて出発し、16時にはここに着いたと。いやはや。

摺鉢窪避難小屋から。


06:15 出発。
 雨上がりの爽快な朝だ。ピッケル君はきのうからもこまめに花の撮影。無粋な僕はさっぱり覚えられない。
 稜線までがひと登り。
07:00 赤梛岳。

空木岳


 空木は目前である。
 はやる気持ち、にっこり気分を抑えながら粛々と。山頂と思われる岩場を右に巻く。
08:00 空木岳。
 「ん? 着いた?」
 とうとう来たか。1996年以来だから10年ぶりである。駒峰ヒュッテ側へは一面のザレ場だったように記憶していたがハイマツが生え、その中に道があった。
 あとは下るだけだからのんびりと体を投げ出して一本。

P君は高いところが好きみたいだ。(^O^) 僕は高所恐怖症だ。


 山頂から木曽殿越へ向かって岩の中を下る。10年も前の記憶との比較ではあるが、かなり整備されているように思えた。
 「こんな鎖、なかったぞ」
 「こんな丸太、なかったぞ」

09:20 木曽殿越山荘。
 檜尾避難小屋の泊まられた方にお聞きするとめっちゃ早い時間に我等が三人とすれ違ったようである。
09:40 木曽義仲の力水

 道は比較的平坦で歩きやすい。
 「こんなにいい道だったら、こっちから来てもよかったかな?」
 「林道歩きでそこそこ登りますからね」
 なんて言いながら下ると、やはり山道には違いない。ぐんぐんと下ることになった。
 
 仙人の泉で11時くらいだったか?
 水を補給。

こんな風景も好きだ。 吊橋


11:45 吊橋。
 地図を見るとうさぎ平へ出るまでにひとつピークを越えることになっている。
 日陰で一本。
 道は巻き加減で結局三角点のあるピークは踏まなかったように思う。
 「もう過ぎてるんとちゃう?」
 八丁覗きを過ぎて下ると、
12:50 うさぎ平に出た。林道がついている。
 「あれ? 林道に出たやん。なんやあ。ほな、あとはずっと林道?」
13:20 倉本との分岐、金沢土場で一本。
 あとは林道をできるだけ短距離で歩こうと道の先まで見通して直線を引き、その上を歩いた。早い話、林道の右から左へ、左から右へと歩いただけのことである。(^O^)

 いい加減疲れて水場で一本。まだかまだかと歩くうちに右下に駐車場が見えた。
14:50 越百山への分岐。
14:55 駐車場。

 風呂は僕がネットで調べたのは千円だったが、ピッケル君が道中見つけたフォレスパ木曽 恋路の湯が800円だったので、そこで汗を流し、「さあ、帰ろう」と国道を走るとやや渋滞、ラジオでは、バス火災事故のため中央道中津川―恵那間が通行止めになっている。急遽、恵那インターを目指すがさらに渋滞。裏道に入り、ナビのご機嫌を聞くと、国道に戻ろうとせず、ちゃんと裏道を案内してくれた。
 「よし、行こうぜ〜」
 なあんてノリで短時間のロスで無事帰阪した。




ピッケル君:中央アルプス南部縦走(越百山〜空木岳)
(花の写真もぜひ御覧になってください)