剱岳―北方稜線 (Aug.12/15, 2006)
池の平小屋から欅平へ
8月14日(月)快晴。
05:30 ほんのりとモルゲンロートに染まる裏剣。 |
山の端に隠れているせいか陽射しは遅かったが5時半頃になると裏剣がほんのりと赤く染まった。僕は縦走路上から撮り、山童子さんは平の池まで下りられた。池に映る逆さ裏剣が撮れたのだそうだ。
テントを干しゆっくりと撤収。
蚊に咬まれたのか左目あたりが痒い。
「郭公さん、左目、腫れてまっせ〜」
08:00 予定通り出発。
仙人山を巻いて最高点で一本。下りにはすぐ仙人池ヒュッテが見える。
仙人池に映る裏剣。 |
09:00 仙人池ヒュッテ。きょうも暑い。「プシュー」
写真でよく見る仙人池越しの裏剣。紅葉の時期はたしかに良さそうだ。
有名らしい小屋のおばあさん、御年76歳だとか。下りの雪渓の様子など手に取るように把握しておられた。阿曾原から登って来られるのだろうか。あるいは、数十年の経験で頭に入っておられるのだろうか。
雪渓を渡り、雪渓を下り、お猿さん三匹の歓迎を受け、これでも一般道だろうかと思えるごつごつした岩の道を下る。
10:40 仙人温泉。
パパさん「そうめん食いたい〜」
山童子さん「却下」
さうは言ひつつ、他の登山客が注文したそうめんをぢつと眺める山童子さんであつた。
今年は雪が多く残っていて、阿曾原へは高巻きの山道ではなく雪渓を下った方が早いとのこと。下ってまた山道に入る手前の雪渓の切れ目に水場があった。
「あそこで昼飯」
その雪渓の切れ目に入ると一挙に涼しい。なごさん、パパさんの吐く息が白い。
パンを食う気にもなれなかったので、半生醤油餅一袋を食う。アップルティーをいただいたあと、ロープの付いた急斜面を登り山道に戻る。だいぶ下ったせいか暑さもひとしお。谷側へ傾斜した道を僕は恐る恐る歩く。
13:00 阿曾原小屋へあと30分〜40分の看板で一本。またもや「プシュー」の相談である。
かなり急な下りだったがみなさん早い早い。僕は膝をガクガクさせながら30分で下りた。
テント場へは小屋から少し下る。
「もう、ここで飲もう」
小屋の自販機の前で「カンパーイ」
設営後、ロープに濡れ物をぶら下げる。なごさんとパパさんは夕食のおかずにと竿を持って釣りに。
15:30 僕たち三人はさらに下って風呂へ。彼らが帰って来ないので「ひょっとしてもう風呂に入っとんのとちゃうか」と噂しながら下りたことである。案の定だった。
昨日も風呂に入った。ありがたいことだ。四角く掘られた広い風呂だ。そばの隧道から湯気が出ていたがそこからお湯を引いている。まさに「高熱隧道」。
急ぐでもなく足湯状態でまったりしてしまう。
風呂から上がって衆議一決、またもや「プシュー」。今回ほどビールをよく飲んだ山行もないぞ。
きゅうりを齧り、おつまみで焼酎。夕食。
「明日は三時起床。四時半出発やで」
8月15日(火)
03:00 アラームに起こされ外へ出ると下弦の月。やたら明るかった。星も見える。もうオリオン座が出ていた。
ヘッデンを点けて朝食。撤収。虫が多く飛んでいて体のあちこちが痒い痒い。
04:20 欅平へ向けて出発。いよいよ最後の日。
いったんぐっと登りほんの少し下ったところから水平道は始まる。ありがたいことに本当に水平なのだ。岩を刳り貫いたコの字型の道はさすがに狭く感じられる。しかも高度感はある。よくぞこんな道を付けたものだ。
ザックの左に外付けしたマットが岩に当りそう。
山童子さん「テントマット右に付け替えた方がええで。ずっと左が壁やから」
虹 |
06:00 滝の水場で一本。マットを右に付け替える。
写真を撮ろうと液晶に目をやるとそれが鏡がわりになって右目が腫れているのがわかった。
「今度は右目が腫れとるわ〜」
「両方腫れとるから目立たへんて」
06:55 谷の狭間に欅平が見える。なごさんによると見えてから2時間だと言う。
もう半分は過ぎたことになる。足元を恐る恐る覗き込む。何と言う高度感だろう。
谷を埋める雪渓の下にトンネルがありヘッデンを点けた。ひんやりと天然のクーラーだ。
次の水場まで一時間だったか。黙々と歩いた。水平道とは言え、さすがに疲れてきた。
鉄塔が見え、「欅平上部」の看板があった。
やっと欅平への下りか。足の裏が痛くなってきた。
「欅平へ700m」の看板で、なごさんとパパさんが待ってくれていて、「ここを下れば終わり」の表情である。
僕も無理やり元気を出して下る。欅平の橋がぐんぐん近づいてくる。つづら折れを右に左にと下ると鉄線で道が塞がれていた。間違ったか? 一本道だったと思うが。欅平はすぐ下である。くぐって通ることにした。
09:15 欅平着。
なごさん、パパさん、山童子さん、芋焼酎さんと固い握手。
「ふう、お疲れさんでした〜」
切符の手配の後、もちろん「カンパーイ」
甘いものが欲しかったので、缶チューハイにした。ごくごくと飲むと胃がきゅうっと痛くなった。
汗だくのシャツを着替えトロッコ電車に乗り込むと、彼らはまたそれぞれにビールを手にしている。
「まだ飲むか?」(^O^)
ありがとうございました。ほんまにケッタイな人たちや。(^O^) |
長次郎の岩場の登り、自力では登れなかった。道に迷うことはなかったが、これもルートファインディングがしっかりできていたからで、一人だったら、なかなかそうはいかなかったろう。
山童子さんはじめ、なごさん、パパさん、芋焼酎さん、ありがとうございました。
僕にも行けました。
なごさん:剱岳・北方稜線をゆく―2006オヤジ隊