なぜか観音山―高見山北尾根のつもりだつたのに・・・
(May 20, 2007)
道に迷った記録。
まずおそらく僕が歩いたルートを示す。
緑が観音山へ登ったルート。青が観音山から下ったルートである。林道が見えた方向の尾根を下ったが結果論だが右の尾根を下れば西杉峠へ出ていたのだ。もちろんそのときは気が付いていない。 |
高見山北尾根を歩こうと、たかすみ温泉に車を停め滝野まで歩いたのだが、きのうまで見ていた新版(2004年)の地図がすぐには見当たらず、本棚から旧版のを手にとって出かけ、現地で開くとなんと高見山以北の記載がない。これがまず原因の第一点。
おぼろげな記憶で林道に入ると「←投石の滝 西杉峠→」の道標もあったから林道そのものは間違っていなかった。ところが終点まで詰めるとその先に道がない、斜面をこそいだような杣道らしきものはあるにはあったが、破線の北尾根ルートとはいえもう少ししっかりしているはずだ。行き過ぎたかな? どうやら分岐を見落としたようだ。
ここから急斜面をガリガリと登った。 | 尾根に出たところだが・・・ |
09:20
ほんの少し引き返すと分岐がありそこへ入るとこれまたすぐに終点。その先には山へも道がない。が、黄色と黒のテープがあり、すぐ上に尾根がある。正規のルート、つまり西杉峠からではないにしても、あの尾根に乗ればなんとかなるだろう。そう思ってガリガリと急斜面を登った。
だがこれも北尾根ではなかった。支尾根のひとつだろう、より高い方へ登って行けば北尾根に合流するはずだと倒木を跨ぎ、藪を漕いだ。原因の第二点。
合流したもののはたしてこれが北尾根なのかどうかよくわからない。赤テープが散見されたが、よく踏まれた道とは言い難いのだ。右か左か? より高い方へと右に取る。
ひょっとするとだが、この赤テープは僕同様に迷い込んだ先達のものかもしれない。
笹を掻き分けながら。 | 赤テープもあったが。 |
09:45 ピークに山名板があった。「観音山」。
地図がないために、高見山北尾根上かどうか。道そのものもまだ半信半疑だった。 |
地図がないからこれが北尾根上なのかどうかがわからない。磁石を出して方位を確認すると、このピークを越えて行けば南へ行くことになるから方角的にはOKだ。では南へ下ろう。
道は相変わらず細い。鹿のひずめが滑った跡がある。青いテープが一つあったから人も歩いている。浅い鞍部から次のピークに登りさらに下る。さらに下るとたぶんだが林道のようなものが見えた。「ん?」。さいわい晴れていて視界はあり、先を木の間から覗くと尾根が続いているようにも見えないのだ。下る一方である。間違えたか。反対方向だったか。引き返した方がいい。
いったん観音山まで戻り、さらに引き返す。尾根伝いにぐんぐん下ると、これまた向こうへ尾根続きというわけでもなさそうである。「間違ってるわ」。どっちへ行っても北尾根へは行けそうもないのである。
「しょうがない。もと来た尾根に戻って下ろう」
どこから飛んで来たのか・・・ | やっぱりどう考えても北尾根ルートじゃない。 |
ところが、ここを登りに使ったのかどうか確証が持てないのである。
風船の束が木に引っかかっていて、登ったのならばそのとき、この風船にも気がついたと思うのだが。
登った支尾根が、この地点からもっと下ったところにあるのかどうか?
振り返るともうひとつ右へ尾根があった。たぶんそれだろうとまたもや登り返してその尾根を下る。藪を漕いでかなり下り、「いや、こんなとこ来た記憶がないぞ。違うんじゃないか?」
赤テープを持って来るべきだった。原因の第三点。
ここを下るか、先ほどの尾根をもっと下るか、いずれも確証が持てないのだ。胸の生命維持装置のランプがピコピコと点り始めた。
どちらかが正しいにせよ、そのいずれかに賭ける気にはなれない。「どうする?」
観音山から南にも下れそうだし、下には林道らしきものが見えたのだからそちらへ下った方が正解ではないか。そこが何処であるにせよ、いったんは安全地帯へ抜け出す方がいい。内心、滝野とたかすみ温泉の間のどこかへ出るだろうと思っていたのだ。
というわけでまたもや観音山へ。それから向こうへ下り浅い鞍部を経て次のピークへ。
鹿の道か人も歩いたのか、枝を掻き分けながら下ると巻道に出た。なんや、道に出たやん。
まず右に歩いてみると途中で切れている。先は藪。では反対側へと歩くともはや廃道ふう。しかも山の奥へ進んでいるような気もしなくはない。暗くおどろおどろしい。
本能が「やめとけ」と言っている。
またもや戻って尾根を下ることにするが、尾根はふたつに分かれているようだ。右を取るか左を取るか。
左の方が上から見えた林道らしきものに近そうだから左を取ろう。
ギンリョウソウ | ずりずりと下った。 |
11:35
ずりずりと下ると、やっと林道に出た。「ほっ」
まずはひと安心。
以上が山中で迷った記録。以下は平地で迷った記録である。
桃俣の初夏。点景。 |
林道を下ると、桃俣の地名があった。モモノマタと読むようだ。「それってどこや?」
さらに下ると御杖村桃俣とある。出発地点のたかすみ温泉との位置関係がはっきりしないのだ。
門前で野菜の手入れらしいおばさんにお聞きすると、山越えか国道へ出てぐるっと回るか。どっちもどっちだと。山はもういいからと国道の方へ歩くと通りがかりのおじさんが親切にも軽トラックの荷台に乗せてくれた。某酒屋のご主人が詳しいから聞いてみてと酒屋の前で下ろしてくれて口まで聞いてくれた。
酒屋のおじさんから詳しくお聞きし、礼を言って国道へ向かうと、その国道は高見山の下を通る166号線ではなく369号線だった。標識は左は松阪、美杉村。右は名張、曽爾とある。「えっ? どっち?」
おじさんは左と言ってたように思うが、どうも歩く気がしなかった。
再度集落へ引き返すと、三季館に車が数台停まっていたから人もそれなりにいると思い、そこでまたお聞きすることにした。
お集まりの方々にうかがうと、「そりゃ山越えの方がだいぶ近いで。国道からだとぐるっと遠回りになる」と。
世話係とおぼしき方がご丁寧にもファイルに綴じた地図を持ってきてくれて山越えの道を説明していただく。その山越えとは西杉峠越えの道だった。
「なんだそうだったのか」
「この地図あげよか」
「いえいえ、大丈夫です。なんとか行ってみます」
「そや、寿司あげよ」
「いえいえ、僕も持ってますから」
「予備食もないといかんやろ。ちょっと待って」
ほどなく巻き寿司2本を。
「水あるか」
「はい、まだ1リットルあります」
ありがたくお礼を申し上げて先ほど下った道を再び歩くことであった。
時計を見ると1時15分。
「そうだ、まだ昼ごはんを食べてなかったんだ」
道路わきに腰掛けまずはいただいた巻き寿司をほお張った。食べきれず三きれ残した。
以下再び山へ入る編である。
それからお聞きしたとおりに歩いたつもりだったがまたもや林道の終点で行き詰った。山に入る道がないわけではなかったがほほ廃道状態。西杉峠への道がこんなに荒れているとは思えない。説明でもそんな感じではなかった。間違えているのだ。「おそらく」と思っていた分岐まで引き返し、それを取るとほどなく大きい新道に繋がった。おじさんは大きい新道へ行ったらかんとおっしゃっていた。
と言うことは、もうひとつの分岐と言うことになる。それは僕が観音山から下りた地点の林道である。そこまでまた歩き、下山地点を過ぎてさらに奥へ歩くと、「あった、あった。これだろう」
林道から谷筋へ上がる道。ロープも付いていた。
桃俣から林道を歩き、西杉峠への登り口。やや登って撮った。ロープが付いていた。 |
15:10 というわけで、ようよう西杉峠へたどり着いたのである。
なんだかなぁ・・・。
西杉峠 |
滝野方面への下りはすんなり。あとはどこに林道からの分岐があったのかを確かめればよい。
西杉峠への分岐。上流から。道標がある。 | 林道を登って来ると道標が見えなかった。 |
15:35 林道。
「なんだ、ここだったのか」
「←西杉峠」の道標もあった。
ほっとひと安心だ。
気をよくして歩きかけるとどうやら上流に向かって歩いていた。なんと言う方向音痴なのだろう。
「こらあかん。反対や」
けれど、それで気が付いたのだが、僕が間違えて入り込んだ林道の分岐からさほど離れてはいなかったのだ。せいぜい150m前後ではないか。
もう少し慎重に下ってみるべきだった。
と言うわけで下流に下って振り返ると、その「←西杉峠」の道標が見えないのである。
「そうか、だから気が付かなかったのか」
でも、テープは幾つもあったから注意して周囲を見回すくらいのことはしてもよかった。
なにやってんだか。
もう少し下って、広く明るいところに出て倒木に腰掛け、いただいた寿司を食べ終え、コンビニ弁当も少し食べた。
17:00 たかすみ温泉。
やっぱり山はなめたらあきません。とくに初めて行く山域はなおさらだ。
そういう意味では収穫は大きかった。
桃俣の人たちの人情にも触れた。三季館の方、本当にありがとうございました。
道をお聞きしたおばさん、酒屋のおじさん、軽トラックのおじさん、ありがとうございました。
自宅そばの酒屋でまたもやスパークリングワインを求めた。