・黄鶴楼 (Jan 17,2001)


故人西辭黄鶴樓   故人 西のかた黄鶴楼を辞し
煙花三月下揚州   煙花 三月 揚州に下る
孤帆遠影碧空盡   孤帆の遠影 碧空に尽き
唯見長江天際流   唯だ見る 長江の 天際に流るるを

 あまりにも有名な李白の「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」。
 きっと二人は別れを惜しんで黄鶴楼で盛んに酒を飲み、酒肴に点心の小龍包を食ったことだろう。

 生きて再び会うことはないかもしれない、永久の別れになるのかもしれない。

 そんな感慨を胸に抱きながら、李白は孟浩然の乗った船が水平線の彼方に吸い込まれるまでじっと見つめていたのではないかと思う。

孟浩然もまた詩人。李白より10歳ほど年長であった。

 春曉                    孟浩然
春眠不覺曉   春眠 暁を覚えず
處處聞啼鳥   処処 啼鳥を聞く
夜來風雨聲   夜来 風雨の声
花落知多少   花落つること多少なるを知らんや


李白には次の詩もある。

    送友人      友人を送る         李白
   青山横北郭   青山 北郭に横たわり
   白水遶東城   白水 東城を遶る
   此地一為別   此の地 一たび別れを為し
   孤蓬萬里征   孤蓬 万里に征く
   浮雲遊子意   浮雲 遊子の意
   落日故人情   落日 故人の情
   揮手自茲去   手を揮って茲より去れば
   蕭蕭班馬鳴   蕭蕭として班馬鳴く

 李白は鋭い刃物のように切れる。その切り口は鮮やかだ。詩人としての才は言うまでもない。
 しかし、あまりにも切れすぎる詩才が、どこか実生活からは遊離しているように思えるのは私だけだろうか。