釈迦ヶ岳(Oct.14/15,2000)

 久しぶりに泊まりに行く。釈迦ヶ岳は大峰山系でももっとも遠いから日帰りだと早起きしなければならない。それはちょっとつらいので、ここへ来るときはいつも泊まりだ。
 前鬼に着くと習志野ナンバーの車。テントが二張り。若い男女が沢登りのいでたちである。笑顔であいさつ。

10:30 前鬼吊橋
 小仲坊までの間でさっそくヘビに出会う。それも生まれたばかりみたいな20cmくらいのヘビだ。四匹は見たろうか。小仲坊の水道から水をいただく。自宅から汲んできたのを空けて、汲みなおす。
 二つ岩までの登りで正直立ちすくんで息を入れることが何度かあった。稲村と違って足元が悪いし、荷物も重たい。二つ岩のすぐ手前の木の根をよじるところでヘビがちょうどカエルだか虫だかを中途半端に飲み込んでいる最中に出くわす。気持ち悪いったらありゃしない。のいてくれればいいものを、先方は先方で飲み込むのに忙しいのだろう。まんじりともしない。正直引き返そうかと思ったくらいである。ヘビはきらい。
 しばらく待って、足元の石を投げてみたけど反応がない。仕方がないからはしっこのほうをよじ登ろうとしたらやっとこさのいてくれた。

12:30 二つ岩
 昼食。ローソンで買ったおにぎり弁当。前回の稲村のときに買ったおにぎりでも良かったのに今回はおかず付きのを買った。おにぎりの個数は3個と同じだがおかずがついてしかも値段も安い。これは買い得と思ったのだが、まずご飯がぽろぽろ。炊いた後ちゃんと蒸していないのではあるまいか。結局一個半しか食えなかった。残りは捨てた。

13:30 太古の辻
 ここの景色はいつ見てもよい。釈迦ヶ岳の往復の中でも一番好きなところだ。修験道のお守りの札らしきものがいくつも打ち付けられていて、その後ろに紅葉した一本の木。岩に腰掛け一服する。ここまで来たら深仙宿まではもうわずか。若い二人が下りてくる。ひとりは地下足袋に腰にのこぎりを二丁。

14:10 深仙宿
 誰もいない。私独りか。ふふっ。潅頂堂の前にザックを置き、コップを持って水場へ。
 ほんのわずかだが岩肌から沁み出している。その水の沁み出しているところに笹の葉が一枚挿し込まれていて、水はそれを伝って落ちている。なるほど、うまく考えたものである。この笹の葉がなければ水は流れているものの汲みとることは難しかったろう。先人の工夫に感謝。水量はタバコを一本吸う間にコップ一杯と言うところか。それでもありがたい。
 山頂はどうしよう。明朝でもいいかとも思ったが、往復する時間は充分ある。空身で体と気持ちをだましだまししながら一歩一歩登っていく。下りに何人かあった。深仙宿で泊まるという弥山からの三人組のおじさんにも会う。

15:10 釈迦ヶ岳山頂
 おじさんとおばさんが三脚を据えている。どうやら夫婦ではなさそう。まあ、そんな詮索はどうでもよい。しばらくあれやこれやの会話。好天だったが遠くは霞んでどうも具合が悪いらしい。段々と冷えてきたので一足先に下りる。彼らは結局降りてこなかった。山頂に幕営したか、旭村の方へ下りたのかもしれない。
 設営後、下着を着替えようかとも思ったが、セーターを上から被り、足元は寝袋に突っ込んで飲み始める。全然寒さを感じなかった。これはセーター、羽毛の寝袋のせいだと思う。そうでなければ寒くて仕方がなかったろう。山ではなぜだか酒が進む。飲み終えて一時間ほどうとうとしていたらしい。外は満月。やけに赤い色をしたお月さんであった。晩御飯の準備をする。レトルトのご飯と、カレー。暖めるのに使ったお湯でコーンスープ。食器をいちおう拭い、さっさと寝てしまう。

06:40 起床
 本当によく寝た。日ごろの睡眠不足を取り戻したのではないか。
 外は雨。大降でないのがありがたい。雨というより、水蒸気が飽和点に達して雨粒になる、その現場に居合わせたふうである。だから雨が上から落ちるのではなく。水滴が漂う中を歩く。そんな感じだろうか。

07:50 下山
 どうやら小屋組は先に下りたらしい。久しぶりに雨具を着ける。熊笹が濡れていたのでまあ正解だ。中で汗をかき、ダイエットにもなるだろう。
 太古の辻で三人組に追いつく。どうやら大日に登りかけたらしいが、雨模様だし足元が不安だからあきらめたとか。じつは私もこの釈迦ヶ岳には何度も来ているが大日にはまだ登ったことがない。いずれということにしておく。
 彼らを追い越して行く、いずれ追いつかれると思っていたが結局その後、会うことはなかった。10人くらいのパーティ。若い単独行に出会う。
 小仲坊で主人が外に出ていたのであいさつ。昨日ののこぎりを持っていたのはここの息子さんだった。道の整備だったとか。ひとしきり先日の遭難騒ぎの顛末などをお聞きする。太古の辻から一つか二つ手前の涸沢を谷へ下りたのだとか。そこを下りてもここの沢には下りない。別のところに出るのにと、せっかく早い道をつけているのにね、そんな話をされていた。

10:10 前鬼吊橋
 上北山温泉薬師の湯。下着は替えたけれど、上に着るものがない。仕方がないから、Tシャツの上からセーターを着た。この時期、車内とは言えTシャツ一枚では寒いだろう。ちくちくするかと思ったが全然そんなことはなかった。
 丹生川上神社上社にお参り。由緒書、出土した遺構の説明書などをいただく。