鈴鹿極楽登山−銚子岳、静ヶ岳、竜ヶ岳、三池岳 (May 19/20, 2001)

 TOHRUさん企画の「鈴鹿縦走計画」第2回目に参加させていただいた。僕は鈴鹿の山は初めてだ。早朝、高速に乗ったとはいえ、DOPPOさんと二上山の麓で待ち合わせて、四日市のインターを下りた所にある待ち合わせ場所のコンビニまで二時間もかからなかった。僕たちがちょうどその駐車場に入るとき、RINさん、TOHRUさんご夫婦も到着だ。ぴったり7時半。RINさんは、山岳会の用事などのため山行はご一緒できないが、幕営地の石榑峠へ食料、水などの荷揚げをしてくれると言う。下山地点に車を回したときのことだ。
 「RINさん、テントとテントマット車に積んどいていい?」
 僕とDOPPOさんはそれぞれ不要と思われる荷物をRINさんの車に残した。それぞれ2kgから3kgは軽くなったことだろう。これはとってもありがたい。
 ストックは持って行くけれど、ストイックになることはない。RIN気応変だ。
 
 治田峠への登山口でRINさんと別れる。「じゃ、夕方」
 TOHRUさんを先頭に、沢を向こうへ渡り、こちらへ渡り返しながら「青の洞門」を過ぎたところで水を補給。
 TOHRUさん、沢を向こうへ渡ったところで、「おっとっとっと」。でっかいヘビがいた。 
 「なに? ヘビ? いややぁ〜」。僕は足がすくむ。水を汲もうとするともう一匹いた。まあ、噛みつかないからいいけれど、小さいときから苦手なのだ。
 水を汲んでいると、「おーい」となにやら聞き覚えのある声が。
 梓さん、旅人さんご夫妻である。何度か、TOHRUさんの携帯に掛けておられたようだ。雰囲気は一挙ににぎやかになる。
 いつのまにか梓さん、トップを切って急登を登る。ほんとに急だった。中尾地蔵で小休止。梓さんから、桃の缶詰を冷凍したのをいただく。時間的にはちょうど程よく解凍されている。甘くて冷たくておいしかった。「なるほど、これはいい」。今後の参考になる。 ここから治田峠までもまた急登。銚子岳への尾根へ上がる頃からぽつぽつイワカガミが顔を見せ始めると、いつのまにかもう斜面いっぱいの群生である。
 「甲子園ほどの広さがあるでぇ」とD氏。
 銚子岳を空身で往復。せっかく急登を登ってきたのに、「うへっ」と思うほど下って、静ヶ岳と竜ヶ岳の分岐へ徐々に登り返す。
 「あっ、キジや」と梓さん。しっぽの長い大きなキジがいた。

 分岐で昼食。
 旅人さんが、ポツンと、
 「行こうか、やめとこうかって思うときは、行った方がいい。行って良かったとやっぱり思うもんね」
 旅人さんは朴訥な人だ。
 空身で静ヶ岳まで。ここもまた、イワカガミの群生だ。それぞれ思い思いにシャッターを切る。
途中で梓さんが悲鳴を上げる。ウサギだ。ウサギもびっくりしたのだろう。山道を駆け下りてくる。DOPPOさんの足元まで来て横へ逃げて行った。
 静ヶ岳からの竜ヶ岳の眺望は素晴らしい。熊笹に覆われた山頂部の斜面のあちこちに丸く剪定したようなふくらみが幾つもあった。
シロヤシオ  「秋になるとあれが真っ赤になってきれいやでぇ」と梓さん。

 分岐まで引き返す途中で、さっきのウサギにまた遭った。ウサギさんも大変だ。どっちへ逃げたらいいのかわからない。
 ここで旅人さん、梓さんは下山。僕たちは竜ヶ岳へ。尾根に出ると、陽射しはもう夏。めちゃ暑い。さえぎるものがない。熊笹の中のすっきりした道が頂上へと延びている。廻りにはシロヤシオであろうか、白い花をつけた木々。
 「ええやん、めっちゃええやん」。大峰、台高とはまた違った味わいである。

 竜ヶ岳山頂で大休止。360度展望バッチリ。
竜ヶ岳  下に、無線の中継搭が見える。
 「あそこが石榑峠。あそこで幕営。下りは急でっせ」とTOHRUさん。
 たしかに、めちゃめちゃ急だった。そこを下るTOHRUさんの速いこと。電波搭がぐんぐん近づいて来る。
 「重ね岩」と言う、燕岳を思わせる岩のオブジェがあった。

 四時ちょうどに石榑峠。やがてRINさんが車で登場。
 「まず、ビール飲む?」
 「飲む、飲む」
 いつのまにか宴会モードに突入。ビール、焼酎、そして地酒。僕はずいぶん酔ってしまった。RINさんは、アジに香草を乗せて、にんにくを少々、これをアルミホイルに包み、フライパンで蒸し焼き。ちゃんとご自宅で段取りしてきてくれたのだ。そうそう、ソラマメもゆがいてくれていた。
 御飯は、ツナ缶、コーンなどを入れて炊く。炊き終えるとシュラフにくるんで蒸す。このあたりさすがにアウトドア「がきんちょクラブ」の面目躍如と言ったところ。年季が入っている。トータルにアウトドアを楽しむことになれていると思った。
 結局、僕もDOPPOさんも夕食用に持参したのは何も使わずまるまるお世話になってしまった。酒も弾めば、話も弾む。
 僕は、テントに入る頃はもう何が何だか状態だった。テントも四人用だろうか大きいのに四人で入った。つまり、持参のテントも使わなかった。シュラフのファスナーも閉めずに上から被っただけでぐっすりと寝てしまう。ここが羽毛のいいところだ。というより、何が何だかだったのだ。

 水も、これまたRINさんが20リットル持って来てくれていた。水に不自由することなく朝食を済ませ、行動中の飲み水をペットボトルやポリタンに移す。
 「RINさん、シュラフも車に積んどいていい?」
 ザックはますます軽くスカスカになってきた。
 「おいおい、これが縦走をしようかって人の荷物かよ」
 贅沢な晩御飯が食べれて、道中の荷は軽い。極楽登山だ。RINさんにはすっかりお世話になってしまた。

 電波搭の横を抜け山道に入るといきなり藪こぎ状態。花崗岩の山なんだろうか、数ヶ所ガレたところが白く見えていた。松が生えている。そう言えばリトル比良にもこんなところがあった。道中には、ベニドウダン、サラサドウダン、シャクナゲ、シロヤシオ。足元にはイワカガミ。
 花の名前は全然知らない僕でも、教えてもらって、やっぱりうっとりと見入ってしまう。

 奥山に 人知れず咲き 散る花の 霧の中にぞ さらにあやしき

 そのガレたところで小休止。昨日も今日もまるで真夏だ。
 それぞれが地図を見る。僕はだいたい時間しか見ないけれど、D氏は、それよりも等高線を見る。ここは見習わなければならない。それにしても、さすがにTOHRUさんはこのあたりのことは広範によくご存知だ。

 三池岳の展望の利くところで犬を連れたおじさんがひとり。ピークを往復した後、ここでビール。ここまでくればあとは下るだけだ。犬連れのおじさんと話が長くなる。きっと誰もが人恋しいのだ。
 振り返ってみれば、今回のコースではブナも見なかったし、大木らしきものもなかった。風の通り道だからだろうか。
 縦走路の向こうに釈迦ヶ岳、御在所、雨乞などが見える。ここからの展望も素晴らしい。 次回の予定コースをTOHRUさんに聞く。釈迦ヶ岳から雨乞へ行って…。釈迦ヶ岳は目の前に見えるけれど、雨乞は遥か先だ。僕はトンチンカンなことを聞いてしまった。
 「その間は車で移動するんよね」。
 TOHRUさん、地図の裏面を開いて、こう行って、この川原で幕営して、こう歩いて…。つまり全部歩く。
 「げっ!」
 それでも一泊で済むらしい。「ホントかよ〜」
 
 八風峠の鳥居では10人ほどの人たちが休憩中。それぞれがカマを持っておられる。登山道の整備らしい。ありがたい。
 「今度からこの道は有料になるからね。あれ、そこに料金箱あったんとちゃう?」
 白い花、シロヤシオのことを地元ではマツハダと言うらしい。正式な学名はわからないがと一人が言うと、「学はないけど額縁ならあるで」と、さっきのおじさん。

 「さあ、下りましょう」と沢沿いの道を下る。沢の水がじつにきれいだ。堰堤をいくつか越えて林道へ。タヌキが左から右へ。
 11時11分登山口着。途中、銃声が聞こえていてびっくりしたが、近くに射撃場があるのだった。DOPPO号に乗り込んでTOHRUさん宅まで、テント、シュラフなどなどを再びザックに詰める。
 「なんや、山を歩いてる時より重いやんか」

 おかげでDOPPOさんとは会う機会もよくあり、山も何度もご一緒させていただいた。僕は知らず知らずのうちに彼に鍛えられているのかもしれない。ほんの少しは山に開眼したかもしれない。ホントは僕はぐうたらな人間なのだ。
 2時40分帰宅。遠くまで行ったのにいつもの山行より早く帰れてなんだか不思議な気分だった。考えてみればここ数週間、この時間に自宅にいたことはなかった。ごく普通の休日の昼下がりを過ごしているような気分だった。
 風呂に入り、歯を磨き、シュラフだけ干して、写真屋へフィルムを出す。結局昼食はパンで済ませたのでラーメン、餅、キムチがそのまま残った。で、ラーメンを作り、餅を入れ、キムチも入れて食べた。




同行の仲間の山行記
梓さん:イワカガミの回廊 銚子岳・静ケ岳。
DOPPOさん:No,294  鈴鹿セブンマウンテン 第二回 竜ヶ岳(1099.6m)