「明神21」の弥山、狼平―オオヤマレンゲ鑑賞とテント山行 (Jul.7/8, 2001)


 弥山からいったん鞍部へ下りてふたたび八剣へ登り返すあたりにオオヤマレンゲの自生地がある。
 鹿の好物らしく放っておけば食い荒らされるので四年ほど前防御用のフェンスが張りめぐらされた。たしかに、甘い匂いがする。が、決して華やかではない、控えめな、いや古風と言っていいのかもしれない、そんな甘さである。香田氏は、これを西瓜の匂いと、DOPPO氏は胡瓜の匂いと評された。
 例えば、化粧をしない女性にも女性特有の甘い匂いがある。
 オオヤマレンゲの甘さとはそんな匂いなのかもしれない。

 花の形、色合いを愛でる。それも鑑賞だが、花の香りを聞くのもまた大切なことではないかと思っている。花にはそれぞれの匂いがある。花のことはまったく門外漢の僕でも笹百合の官能、オオヤマレンゲの素朴さはちょっと分かりかけてきた。

 さて、今回の「明神21」の山行テーマは、このオオヤマレンゲの鑑賞とメンバーでのテン泊の体験である。幕営地は狼平。
 へべれけ隊のRINさんTOHRUさんは前週、よし庵さんも前週、梓さんは前日行かれたそうだ。それぞれいろいろと予定がある。森の音さんは参加予定だったが、お姉さんが突然の病に倒れられて残念ながら今回は自重された。重篤だそうである。
 今回の参加者は、安芸さん雪さん。お二人のザックがヤケに重たそうである。円さん。どんかっちょさん、milionさん、郭公。虎さん。そして、HAMAさん、モリザネさん、DOPPOさんである。
 香田さんは明朝、坪ノ内から飛んで来られる予定である。

 トンネル西口からDOPPOさんの先導で、今回は沢沿いに奥駈出合まで上がった。この道は初めてだったが、いつもの石楠花の直登の道よりやや距離はあるものの比較的緩やかだし、まず人に遭わない。途中の岩場で休憩。ネットで知り合ったこの人たちと濃淡の差こそあれいったい何度目の山行になるのだろうか。相変らず話題は尽きない。円さんは相変らずダジャレを飛ばす。円さんのはわかりやすくてよい。虎さんのがやや難解だ。考えた末に「ふふっ」と笑えるのもあれば、結局つまんなかったりすることもしばしばである。
 そうは言うものの、虎さんにもずいぶんお世話になっているのだ。

 奥駈出合で小休止。なんせ時間はたっぷりある。ここまで上がるとあとは緩やかな尾根を聖宝宿まで。
 最近のネットの話題と言えばmidiの扱いである。JASRACが著作権使用料を徴収すると言う。僕たちの仲間はなぜかそれぞれBGMを入れていてもちろんその音楽は和洋を問わずネット上でダウンロードしたものを使っているから即影響する。いったんBGMを外して様子をみるしかないのが現状のようだ。でも何か釈然としない。そんな話題ともうひとつは携帯電話。僕はこの携帯にはさっぱり興味がない。

 聖宝宿から弥山の尾根までやや登る。晴れていれば、稲村、大普賢などが見えるがあいにくの曇り。でも、週間予報では雨模様だったのが近づくに連れ曇りから晴れへと変わって来たのだから、降らないだけでもありがたい。

 弥山の尾根で一服。山頂はもうそこだ。お昼は小屋に着いてからにする。ザックを下ろすや否や、円さんの人差し指は缶ビールのプルトップを引っ張っていた。
 僕の昼食は、コンビニで買った「サラダ巻き」。デザートに梓さん直伝の缶詰の桃をタッパに入れて冷凍庫で凍らせたもの。いつだったか鈴鹿でいただいた。甘くて冷たくておいしかった。「山で食べるときはほどよく解凍されてちょうどええねん」
 ついでに、今回僕が持参した食料を記しておく。
 夕食用に、レトルトの御飯。レトルトのビーフシチュー。コンソメスープ。焼酎。いかくん。いかり豆。
 朝食用に、パン2個。紅茶。
 お昼用に、ラーメン、餅。
 以上である。いつもこんなものだ。


 ザックを小屋のそばに置いて空身で八剣まで。途中の鞍部で谷へ下りてDOPPOさんに水場を教えてもらう。
 オオヤマレンゲのそばではそれぞれが撮影会である。
 引き返して弥山山頂の天河弁財天奥宮にお参りして狼平へ下る。

 16時狼平着。
 小屋にはすでに数人先着組がおられたが幸いテントはなかったので、僕たちは予定通りの五張りを設営。
 さて、晩御飯だ。小屋前の平坦地に車座になる。

 ここで僕にとってはおおいにカルチャーショックなことが起こった。
 安芸さんが、まな板でトントンと食材を切り始めたのである。雪さんが「御飯炊こか?」
 そんなノリで夕食の準備が始まった。

 僕はと言えば、さきイカやいかり豆をつまみにいつもながらまず焼酎を飲む。飲み終える頃お湯を沸かしレトルトの御飯やらシチューを温める予定であった。質素な、いや貧相なと言った方が実態であろう。そんな晩御飯になれているのだ。
 一方でそれぞれが酒肴やらおかずやらを出してきて、ワインもありいので、アレを飲め、これを食えと。
 なかなか皆さん発想が豊かなのである。みんなで楽しむ術を知ってらっしゃる。
 僕はおかげで自分が持ってきた食材には手付かずのまま腹いっぱいになってしまった。
 消費したものと言えば焼酎だけである。いつもより沢山飲んでしまった。

 カズさんの後継者H嬢の電線音頭、D氏の指パク手品と盛りあがり、狼平は夕闇から漆黒へと更けていくのであった。僕は睡魔に襲われ早々とD氏のテントに潜り込んで朝まで熟睡したが、他のみなさんはそれからまたいろいろとおありになったようである。

 早朝、コーヒーをごちそうになりパンを食べる。
 円さんが起きてきて「オレのパンがない〜」。そう言いながら昨晩の定位置にごろんと横になる。
 DOPPOさんに狼平から下の沢を案内していただく。沢へ張り出した壁にピンを打ってあるところを歩いたり、はしごで下りたりと、スリル満点だ。下流から三人。河原小屋に泊まったそうである。

 往復約一時間で狼平に戻る。
 「おおおっ」。
 香田さんがすでに到着である。早い早い。
 円さんは相変らずごろんと横になってはる。
 「パン、ありました?」
 「あったあった。枕にしとったわ」

 さっきは沢の下流を歩いたが、上流のほうもなかなかいい、と香田氏。
 「ちょっと散策しましょうよ」
 上流は緩やかなナメが続いている。狼平の橋を境に沢の景観は一変している感じだ。これも穏やかでなかなかいい。
 「ずっとこんな平坦なんかな?」と安芸さん。
 「それやったら水流れて来ませんやん」と円さんに突っ込まれる。
 安芸さんは相変らずの大ボケなのだ。

 ザックをまとめ水を汲んで天川方面へ下山。僕はこれまでにも何度か書いたこともあるが、ここから栃尾辻までの道が大好きだ。広々とした尾根のブナ林。


 幽州台に登る歌     陳子昴 

前不見古人   前に 古人を見ず
後不見來者   後に 来者を見ず
念天地之悠悠  天地の悠悠たるを念い
獨愴然而涕下  独り愴然として 涕下る

 栃尾辻でやや早めの昼食。ここでもまた、みなさんからの戴きもので満腹になる。
 香田さんとDOPPOさんは坪ノ内方面へ。

 僕たちは天川へ。途中で、僕とmilionさん、HAMAさん、モリザネさんは林道へ。いずれ林道出合で合流する。僕たちの方が早いと思っていたら時間的には1分も違わなかった。
 鉄塔で最後の休憩。ここも好きなところだ。観音峰、稲村などが見渡せる。
 
 milionさん、なぜか速足になって、「ビっ、ビールぅ〜」と叫んでいつの間にか消えてしまった。
 やっと役場のグラウンドが見え、DOPPOさん、香田さんの姿も見えた。グラウンドを横切ってハイ到着。お疲れさまでした。
 ちょうどそこへmilionさんが缶ビールを買って来られた。そのビールの美味しかったこと。
 トンネル西口へ車を取りに行き、それから天川温泉。
 久しぶりの「明神21」の大パーティでの山行だったが、とても楽しかった。
 よくもまあこれだけの個性がそろったものだと思う。この人たちとめぐり合えてとても良かったと思う。


  追記
 後で分かったことだが、7月6日未明、森の音さんのお姉さんが他界された。
 心よりご冥福をお祈り申し上げます。



同行の仲間の山行記
milionさん:弥山の天女花
円さん:オオヤマレンゲ咲く「弥山」へ
HAMAさん:弥山・八経岳〜狼平へ  天女の舞「オオヤマレンゲ」を訪ねて
どんかっちょさん:狼平とオオヤマレンゲ
安芸さん:弥山から狼平テント泊