青空の明神平(Feb.17/18, 2001)

 今回の山行を特徴付けるのは、何と言っても、青空と雪の深さだ。
 前日、東吉野村小川にある杉ヶ瀬茶屋の彦兵衛さんから気象情報を流していただいたが、山へはおろか、林道さえも車が入れないのではないかと思えるほどの積雪であった。明神平へは、この時期、過去何回か行ったことがあるが、こんなに雪が多かったのは初めてだ。

 当日は、からっとした青空。無風。
 明るい日差しを浴びながら、旧あしび山荘で一服する頃は、防寒具代わりの雨具も脱ぎたいほどであった。
 組長のアイゼンを拝見する。鍛造なんだとか。このアイゼンは、アラスカの6000メートル級の山へも一緒に行ったそうである。組長同様、アイゼンもまた年代物なのである。
 明神平まであとわずかのつづら折りの道で、もはや下山する人がいた。
 「トレースがいつもと違ってました」
 「でも行って来たんですよね?」
 「はい」
 なるほど、左へ巻くところを小さな沢沿いに上がっている。
 「どうしましょうか? いつもの道にトレース付けましょうか?」
 「しんどいで。いま付いているトレースからでも行けるんやから、そっちから行こうや」
 僕にとっては、このルートは初めてである。とても面白かったけれど、雪は深く、急登だ。さすがにしんどい。明神平から前山へ上がるスロープの下よりのところへ出た。出る直前のところにトタン囲いの小屋があった。猟師小屋だろうか。

 あしび山荘に着いたのが1時15分ごろだったか。
 昼御飯にしましょうと、水場まで汲みに行く。天理大小屋の裏から水場まではトレースがない。ほんのわずかの距離だが深い雪のためになかなか先へ進まない。思いきり足を引き上げる。足がつりそうだ。
 今日の予定は、空身で薊の往復だったけれど、その気分も失せてしまう。それほどの雪であった。
 あしび山荘の横に、僕とDOPPOさんはそれぞれテントを設営。それが済むと、いろりを囲んでぼちぼち飲み始める。虎さん、DOPPOさんと話が弾む。煙が目に沁みる。半ば燻製状態。
 この「あしび山荘」には昨年の11月以来、何度かお世話になった。その都度、燻製された防寒具代わりの雨具、セーター等々、あしび山荘の煙の匂いが沁み付いてなかなか取れない。
 晩御飯を済ませ、DOPPOさんと僕はテントへ。
 「クマみたいないびきかくもんがおらんから、ゆっくり寝れるわ」と組長。

 6時45分起床。外を見ると、東の空の雲が薄赤く染まっている。
 急いでテントから抜け出す。薊岳もほんのりモルゲンロートであった。
 朝食後、一筋のトレースに従って桧塚奥峰を目指す。静かな明神平の朝である。明神岳の尾根に出るあたりでひとりテントを張っていた。トレースは尾根沿いではなく、ショートカット気味に、尾根の下あたりに付いている。下って、谷を跨いで再び登ると、そこにもテントがひとつ。
 明神岳からの合流点あたりで一服。桧塚奥峰が落葉した木の枝越しに見える。気温もだいぶ上がっていたのだろう。
 ここから引き返す。当日組のメンバーが「あしび」へ着く頃に僕たちも帰り着いていることになろう、と。
 途中から「わかん」を履かせてもらう。さすがに潜る深さが違う。いままでより高いところを歩いている。
 「これはいいわー」
 僕は愚かにもこの深謀遠慮にまだ気が付いていなかったのだ。途中から、たどって来たトレースを引き返すのではなく、もっと短い距離で明神平まで行くトレースを作ることになった。わかんを履いているのが僕だから先頭を歩かざるを得ない。後ろから組長が「11時の方向」「10時の方向」(表現が古いのだ)、若頭が「等高線にしたがって」と、行き先を指示してくれる。夏道の明瞭な道しか知らない僕にとって、雪の中の歩き方を暗に教えてくれているのだった。それにしても、深雪にトレースを付けるのはホントにきつい。

 明神岩に来ればあとは下る。若頭はずっと引いていたソリに乗ってあっという間に下りてしまう。「あしび」に着いて、テントの撤収をしていた頃だったろうか、まえだ こさんが来てくれていた。中国語の勉強だか、ダート千六のGIの発走であったか、離婚訴訟の家族会議であったか、用事のためにゆっくりしていられないと言う。それでも、忙しい合間を縫って来てくれたのだ。
 そうこうするうちに、(▼▼〆)、こんなサングラスをかけた円さん、そのほか当日組の皆さんが上がってくる。
 「やあやあやあ」。昼食後、国見山へ、ソリスキーへ、前山でスノボーへと、それぞれ楽しんだ後、ふたたび煙が目に沁みる「あしび」でyokoさんが持って来てくれた伊勢の黒砂糖餅、よもぎ餅、白餅をぜんざいに入れ舌鼓を打ったあと、大又へ下り、風呂に入り、彦兵衛さんの「杉ヶ瀬茶屋」で、ぼたん鍋うどん、かも鍋うどん、杉ヶ瀬うどん、中には生ビールを一杯のみならず…。




HAMA姐さん:明神平
若頭 DOPPOさん:大雪の明神平
(▼▼〆)円さん:国見山
彦兵衛さん:明神オフ21に
よし庵さん:明神平で雪遊び
紀伊ハンターさん:雪の明神平に遊ぶ