「百年の孤独」、藤原岳に遊ぶ、の巻 (Mar.24, 2002)

 この日の藤原岳はずいぶん前から決まっていて、ほぼ時を同じくして、円さんとこでは四十九日がこの日に決まっていたらしく、ご本人は前週単独ですでに行って来られて、今回は不参加だった。

 倍金満教授から「内緒でこっそり参加したい」と連絡をもらい天理にお迎えにあがることになった。みんなをあっと驚かせたいらしいのである。ミリオンさん、hiroさんと金剛駅で会い、美原北から高速に乗り、天理で教授と会う。
 高峰SAで他のみんなと待ち合わせ。僕たちが一番に着いてしまった。
 そうこうするうちにDOPPOさん、香田さん、HAMAさん、モリザネさんが到着。
 安芸さん、雪さんが到着。
 そして、森の音さん、どんかっちょさん、よーこさんが到着。
 総勢13名である。
 幹事はDOPPOさん。手際がよい。交通費の清算を先に済ませ、では行きましょう。

 M氏「ビールは持ってきたんやけど、雨具は持って来なかったんよね」
 h女史「防寒にもなるんやから持ってこなあかんわ」
 M氏「ズボンは泥除けに持ってきたんやけど」
 伊賀を過ぎたころだったろうか、土砂降りになった。
 M氏「こらあかんわ」
 さいわい鈴鹿が近づくにつれ雨も上がり、雲も徐々に高くなった。鎌ヶ岳がすぐそれとわかるとんがりを見せていた。
 四日市のインターを下りコンビニで食料、ビールを調達。HAMAさんは「無頼派」を。
 
 鈴鹿は僕は四回目だが、藤原岳ははじめてである。昨年の鈴鹿縦走シリーズの第一回目が御池から藤原だったが、そのときは欠席してしまった。
 この季節、福寿草がきれいだとのこと。写真は円さんやpanaちゃんが掲示板に貼ってくれてたけれど、実物はまだ見たことがないので、それも楽しみのひとつだった。
 登山口の聖宝寺周辺はすでに車で一杯。300円の有料駐車場にとめる。

 ハイキング用の小さなザックには雨具、食料、カメラ。スパッツは持って来なかった。
 それぞれが身支度をしているとき、「郭公ちゃん、ちょっとスパッツの具合見てくれへんかなぁ」と教授。片一方はすでに装着済みだがもう一方がうまくいかないらしい。
 「どれどれ」。よく見るとどうやらファスナーがうまくかみ合っていないのだ。
 教授はスパッツの片一方だけで歩きはじめる。神社の横の階段を上るとき「カズさん、ザックから水洩れてるよ〜」。ポリタンの蓋がこれまたはすかいに閉まってるらしい。
 教授は水を滴らせながら、スパッツは片方だけで歩いている。
 ヒトリシズカが咲いていた。「そこそこぉ」と雪さんが言うけれど、「えっ? どこどこ?」
 やっと見つけた。白い小さな花だった。

 山道は長い列である。道は水分を含んでいて石がツルツル滑る。
 五合目あたりで植林帯を抜け尾根に出た。ひと休みのときHAMAさんから大粒の苺が回って来る。

 「ああ、あったあった」。福寿草である。黄色い花ビラ、茎は意外としっかりしていた。
 浅い谷を挟んだ向かいの斜面は日当たりが良さそうで雪はなく一面に福寿草の群生である。名前はわからないが、ほんとうに小さい白い花があった。誰もがかがんでぐっと寄って撮っている。
 八合目まで来るとさらに人が多くなった。もう一方の登山道がここで合流するとのこと。
 そこからは雪解けのどろどろ道である。滑らないように、はまらないように気を付けながら登っていると、hiroさんからDOPPOさんに電話がかかったらしい。どうやらhiroさんが見当たらない。迷子になっているらしいのだ。それほど人が多かった。
 
 HAMAさん曰く、四月になるとこの登山道のそばにもカタクリが咲くのだそうである。
 よーこさんは酒に詳しい。飲めるけれど飲まないのだそうである。奥ゆかしい。
 香田さんはいつのまにか半そでのTシャツになっている。やたら脂がまわっていそうでそれでも温いのにちがいない。

 避難小屋に着く。ここも人でいっぱい。向かいのこんもりしたところが藤原岳のピークとのこと。みんなが到着するのを待って昼御飯にする。さすがにじっとしていると寒くなってくる。脱いだトレーナーを着込み、雨具の上を羽織る。
 「あれ? カズさん、長靴履いてますやん。いつのまに?」
 「最初から履いてるやん。地元の人ですか?って聞かれてもうたで」
 「そやったらスパッツごそごそせんでも良かったのに」
 ビールを飲み弁当を食べてしまうとザックは途端に軽くなった。HAMAさんから「無頼派」をいただく。
 昼御飯を食べていると、こまくささん、ひがやん、モモタローさん、それにもう一人。
 山頂まではどろどろ道の藪漕ぎである。見覚えのあるすっきりした稜線の竜ヶ岳が見える。その奥の双耳峰は雨乞だったか? 北にはまだまだ白い御池岳が。

 安芸さん「東京はこっちやろ?」
 「えっ?」「そやかて伊勢湾の向こうやろ?」
 それはそうだろうが、こんなとこで東京はどっちや?って聞かれても困る。
 「東京の向こうが北海道なんやから、北はこっちなんとちゃうの?」
 「なにゆうてますねん。日本列島は東京からぐっとこう曲がってますねんで。だから北はこっちですやん」
 ただ、いま地図を広げて方角を確認すると、藤原の北に御池があると思っていたけれど、むしろ西に近い。だから、安芸さんが言ってた方角のほうが正しかったようである。

 小屋に戻ると、TOHRUさん、RINさんの顔が見えた。
 「おおおっ」「しっ。いまテレビの録画やってます」
 小屋に入るとpanaちゃんもいた。地元のケーブルテレビと一緒に登って来たのだそうだ。
 香田さんとどんかっちょさんは天狗岩の方へ行ったらしい。僕も途中まで行ってみることにする。広い尾根を歩いているうちに吹雪になった。雪が付けば広い尾根だから迷いやすいのではないだろうか。香田さん、どんかっちょさんと会ったので一緒に引き返そうとしたら、「すぐその先に福寿草がいっぱい咲いてる」とのこと。ぶらぶらと歩きかけるとほんとにあちこちに咲いていた。道を離れ広い尾根を歩き回る。吹雪の中、黄色い花に白い雪がかかっている。

 小屋へ帰り、記念写真。例によって森の音さんがストックの先にデジカメを付ける。
 「はい、オッケー」と列の中に森の音さんが飛び込んで来たのだが、「あれ、ピコピコしてへん、ちょい待って」
 もう一度セッティングをやり直す。今度は大丈夫みたいだ。レンズのそばのライトがピコピコしている。

 この森の音さん、大ボケのようでいて実はアイデアマンなのである。ドロドロの道を歩きながらまたひとつ思いついたことがあるらしく、なにやら大儲けをたくらんでいるのである。特許を取るから内緒にしておいてくれとのことである。

 雪ちゃんに安芸さんから画像をメールで送ったのだが、雪さんがお米を研いで御飯を炊いて、晩御飯を食べ、洗い物をしててもまだ受信中だったんだとか?
 
 後ろでガリガリ音がすると思ったら、HAMAさん、モリザネさん、滑らないようにアイゼンを履いて下りている。

 八合目の分岐を右へ。四合目から、僕と安芸さんと猛スピードで下りた。教授もなぜか付いて来ている。付いて来なくてもよかったのに。
 幾つかのパーティを追い越す。panaちゃん、TOHRUさん、RINさんたちにも追いついてしまった。神社まで下りる頃雨になった。

 どろどろの靴は流水にさらしてもなかなか落ちない。
 panaちゃん、TOHRUさん、RINちゃんと別れて僕たちは登山口へ。
 希望荘で風呂に入り、軽くビールを飲んだ。希望荘の二階はほぼ満席状態である。

 少し酔っていたのか、教授が、「ほな電線音頭をやるわ。どこがええかな? あそこの広いところでやろうか」
 僕にはさすがに羞恥があった。立ちかけた教授の腕とベルトを掴み、
 「教授、お願い。ここではやめて」





HAMAさん:フクジュソウの藤原岳
安芸さん:藤原岳(1140m)
DOPPOさん:藤原岳と福寿草
milionさん:福寿草の藤原岳