09:30 この橋を渡る。

 薄暗い林道を詰めるにつれて緊張が高まった。
 雪煙が舞い、眼前の山頂部を掠めて雲が流れていた。
 中の川出合の長い吊り橋。その向こうには屹立した山。その山に入って行くのだ。
 縁起でもないことだし、あってはならないことだけれど、「山で人が死ぬのはこんな時かもしれない」、ふとそう思った。
 「気を引き締めて行こうぜ」とDP氏。


 吊橋を渡るといきなり鉄梯子の急登だった。
 DP氏、「まるで双門コースみたいやな」
 Don氏、「ほんとそうだね」

 この鉄梯子がいくつも続き高度を稼ぐ。
 新雪は3cmほどだったか。
 さらさらしていて、下は凍っていなかったのがありがたかった。


 鉄梯子を過ぎると杉の植林帯。中の川からはずいぶん高いところを歩いた。
 山腹を巻きながら沢を何本か渡るうちに青空が見え、日が差してきた。気分はだいぶ楽になった。

 ここが植林小屋かと勘違いした。ウインチの機械が据えてあった。
 七面尾を横切る林道が見えた。
 道はやや下り気味についていた。

 振り返ると釈迦ヶ岳方面に真っ白に樹氷が。


 釈迦方面の樹氷。
 別世界である。青空に映えてとてもきれいだった。


 さらに沢を横切り巻道を下って行くと新しい小屋が見えた。「旭山荘」とあった。
 そばまで行くと林業用モノレールが走っていた。
 すぐ上に小屋がふたつ。
 地図にある植林小屋とモジケ小屋であろう。
  ここからが急登だった。
 だいいち、道が判然としない。テープはあったが、モノレール沿いの急登である。モノレールにつかまりながら登った。
 どうやら道はこの急登の尾根上にあるようだがモノレールに寸断されていた。 


12:30
 ふうふう言いながら尾根を詰めると、なんと林道に出た。
 七面尾を横切る林道がここまで延びているようだ。
 目の前の尾根の取り付きがわからなかった。
 この林道を左に取ると100mほどで終点。そこから右に赤いテープが見えた。
 時刻は12時半。下辻山まではまだだいぶかかりそうだ。仕方が無い。引き返すことにする。
 先ほどの旭山荘の軒下で風をよけて昼ご飯。
 ほっと一息ついた。


 鉄梯子を下る両巨頭。
なんせお二人は双門コースの経験者である。

(なお、今回使用した写真の大半は両氏の許可を得て拝借したものである)
15:30
 吊橋に到着。
 DOPPOさん、お疲れさまでした。
 連日の撤退劇にお付き合いいただき申し訳なかったですね。

 どんさん、早朝からお疲れさまでした。
 これに懲りませずまた行きましょね。


どんかっちょさん:下辻山登山撤退








中の川出合から下辻山へ行く予定だつたのに・・・の巻 (Mar.9, 2003)