五番関から大所山−鹿の角を拾うの巻 (May 17, 2003)


 前夜、登山届のつもりでお二方に「明日からテン泊の予定」とメールを書いたにも拘わらず、朝起きてみるとやたら体が重い。ぐったりしている。気がついてみると、帰宅してスーツを脱ぎ、ネクタイを外した状態で眠ってしまっていた。
 これからテン泊用のパッキングはさらに気が重かったし、予報は晴れなのだが外はどんよりと曇っている。結局、あれこれとネガティブな言い訳をこじつけていたに過ぎないのだが。
 トーストをかじりながら、「そやそや」

 軽いザックで洞川へ向かう。
 豆腐屋さんに声をかけ、五番関トンネルに着いたのがちょうど8時。
 あんパンを無理やりカフェラーチェで流し込む。山靴を履く。

08:15
 いきなりの急登を杖を突きながら10分で五番関。まだ体がしゃきっとしない。
08:25
 結界門をくぐり奥駈道を、この3月のことを思い出しながら歩く。巻き道が大きく内側へ湾曲するあたりで引き返したのだった。いやはや、お恥ずかしいことだ。
 鳥が鳴き、木漏れ日が心地よい。ひと汗かきようやく体が慣れてきたようだ。

鍋冠行者 尾根にて

08:45
 鍋冠行者。あのときはここまでも来れなかった。
 もう少し先に大所山への稜線の分岐があるはずだ。
 この奥駈道から大所山への稜線は、地図を見る限り穏やかだから散策にはちょうどよいと思うのだが、昭文社の地図には破線さえも示されていない。国土地理院の1/25000も同様。なぜなんだろう?
 4月、大所山から鍋冠行者の方へほんの少し歩いてみると、岩場に遮られた。ここをどう通ったらよいものかもよくわからなかったが、穏やかな稜線のように見えて実際歩いてみるとあちこちにこのような岩場があるのだろうか?
 そんなことを思いながら奥駈道を離れ稜線を下る。右手、南側にはもうひとつ尾根が走っている。これは勝負塚山へ続いている。こちらは難しそうだ。左には五番関トンネルが見え、林道が横切っているのが見える。
 いったん下るとあとはゆったりとした稜線だ。踏み跡程度の道もある。石楠花も咲いている。
 「ええやんか」

09:15
 小さなピークで小休止。たぶんここがp1314ではないかと思う。
 巻けば早そうなところでもなるべく尾根を外さないように歩く。初めての道はやっぱり慎重にならざるを得ない。
 気持ちよく歩き、いったん鞍部に下り、登りかけると石楠花の森にぶつかった。その上にピークがある。さて、どこをどう歩いたものか? いずれにしてもそのピークを目指すしかないのだ。
 左は岩場になっている。踏み跡もどうついているのか定かではなくなった。比較的隙間がありそうなところに強引に枝を掻き分けながら入り込む。
 石楠花の枝の伸び方にはどうも法則性がないようだ。まるでその都度都度、行ける方へ伸びている、そんな感じである。しかも枝はけっこう強そうだ。
 やっと抜けるとずいぶん古そうな赤いリボンがあった。かろうじて踏み跡らしきものもあった。それにしたがってやっと山頂部へ。帰りのためにここにテープを巻く。

p1401 おなじくp1401にて
p1401の端っこから。この右奥に大所山 最後の岩場

09:45
 どうやらここがp1401ではないかと思う。ここもまた石楠花の森である。
 さてここからどっちへ?
 木間越しに山が見える。そうかそっち方面かと歩きかけたがどうも怪しい。見えていたのは大所山ではなく勝負塚の方だったようだ。引き返して山頂の反対側へ行ってみる。すぐ目の前に岩場の山が見えその右奥に見覚えのある大所山らしき山容があった。「こっちだな」と思うもののその岩場へは尾根が繋がっているのかどうかよくわからなかった。ずいぶん下りそうな感じがする。ここからは行けそうもない。再び山頂へ戻り回りを見渡し、石楠花を掻き分けながら尾根の続き具合を見る。
 やっと行けそうなところを見つけ徐々に下る。「ほんまかいな」と思うほど谷へすとんと落ちた崖をへつり、ようやく尾根に出た。さっきの岩場が左に見える。ここは尾根を巻いたほうがよさそうだ。テープを巻いておく。
 それから再び尾根へ急斜面を登る。尾根に出ると、尾根沿いに踏み跡らしきものがなくもない。
 「なんだかな」

 忠実に尾根に沿っているとついに岩の痩せ尾根になってしまった。いくらなんでもこれはあかんやろと、引き返し下を巻くことにする。
 痩せ尾根あり、木々の密集のために通れなかったりでやっかいな尾根道だ。巻きながら少しずつ下りて行くとやっと見覚えのある岩場の上に出た。
 4月、大所山から来たとき引き返したところだ。
 しかし、これをどう下ったものか?
 これまた右の急斜面をこそぐように徐々に下り赤テープがすぐ下に見えるところまで来た。手がかり足がかりが不安定。どうしたものか?
 木の根をつかむとポキッと折れる。岩の出っ張りをつかみ、足場を探しようやくわずか10mほどをトラバース。テープのところへは急すぎて下りれそうにない。結局尾根の正面から木の根をつかんで下りることであった。
11:05
 「ふう」
 帰りもここを通らないといかんのか・・・。
 結局、p1401からこの岩場までが核心部だった。
 やっかいな尾根道だった。地図に道が記されてないはずだ。
おわんのピークへ 大所山山頂

11:35
 あとはもう穏やかな道である。おわんのピークを過ぎ、左へ曲がり大所山山頂へ。
 きょうは誰もいない。
 ブナの新緑が気持ちいい。
 おわんのピークまで引き返し、蛇腹の日当たりのいい平坦なところにシートを広げ昼ごはん。琵琶の滝方面へ下る痩せ尾根にも石楠花が随所に咲いていた。

 さて、引き返そう。
 さっきの岩場。どっから登ろうか。赤テープのところはどうも無理そうだ。登らずに下へ巻いてみるか? それも危なそう。結局さっきと同じところから「えいやっ」と中段まで登ったのはいいが、立ち往生してしまった。
 どこをつかんでもぐらぐらする。足の置き場がない。困った。さっきはどうやって下ったんだろう?
 ほんの少しの岩の出っ張りをつかんでしっかりしていそうな木の根に足を乗せそろっと体重をかける。
 「ふう」
 やっと安全地帯へ。
 来たときはこの左を巻いて下りてきたように記憶しているが尾根にも上がれそうだ。そのほうが安全かもしれない。尾根に上がるとさらに岩がある。これを右に巻くように踏み跡らしきものがなくはない。
 要するに往路と復路で尾根の岩場の反対側を巻いたことになる。
 その後も2度ほど同様の巻き方をした。派生した尾根に迷い込みさえしなければ、なんとか行ける。
 そのうちのひとつで鹿の角を見つけた。角が4本に枝分かれしている。結構大きいぞ。帰宅して測ると全長42cm。トレーナーに包んでザックに入れる。
 p1401の手前で一本。
 がりがりと石楠花の枝を掻き分けて登り、これまた往路とは違う道を下ってやっと穏やかな山道まで戻った。
 「ふう」

 p1314を過ぎたあたりで一本。結界門をくぐるから女性は来れないけれど、p1401直下までならおとなしい山道だ。ここまで石楠花を見に来るのも悪くはないだろうが、まあそれも数寄者の世界かもしれない。

鹿の角

14:20
 鍋冠行者。ちゃんと帰って来れた。手を合わせる。
14:35
 五番関結界門。ここでお茶を飲みきる。さっきの鹿の角を出して見る。ふふっ。
14:55
 五番関トンネル。


 ごろごろ水を汲む。
 茶屋が出来ていた。水を汲むのに300円徴収すると言ったが、話を聞くとそれは20リットルのポリタンで3つも4つも汲みに来る人に適用されるとのこと。山帰りに2リットルのポリタン、ペットボトルに汲むくらいはノーカウントとのこと。

 予約した豆腐をいただいて、ついでに豆乳(一杯100円)を飲んだ。豆乳は生まれて初めてだ。牛乳に近い味だとばっかり思っていたけれど、そうではなくなんだか青臭い味だった。