番外編 篠原林道と吉野三山 (June 1, 2003)

 先週の下辻山がもはやはるか以前のことのように思われる。
 小雨だったけれど、予報は曇りのち晴れ、ひまわりを見てもなんとか晴れてくれそうだ。
 8時前には篠原に着いていて、腹が減ったので湯ノ又で車を停めてパンを食う。
 雨は依然としてさやさや降っている。

 さらに車を入れるとゲートの前の橋を木が塞いでいた。
 「なに? 進入禁止か? まさか先で工事ってわけでもないだろうに。昨日は台風だ。どうしよう。出直すか」と車へ戻りかけると、釣り人が一人。
 「進入禁止かな?」
 「流木やで。昨日はだいぶ増水してたから」
 「それでは」と「よいしょ、よいしょ」と木を河原へよける。

 先週に比べると崖石からの水量も増えている。がたがた道をゆっくりと走り、急カーブを登る。
 七面山登山口を過ぎると林道は下る。ここから初めての道だ。そう、僕は神仙平を目指していたのです。ゆっくりと下ると道路右半分に落石。
 「あらら」。
 すこし転がしてやれば通れそう。
 ここでもまた「よいしょ、よいしょ」と石を三個ほど転がした。手が泥だらけになってしまった。くねくねと曲がりながら下って行くと、
 「あちゃー」。
 今度は道の真ん中に大きな石だ。いくらなんでも非力な僕には動かせそうにない。車を降りて見に行くとその20mほど先には道一杯の落石である。
 「こらあかんわ。出直そう」
 引き返すにも狭い林道だ。方向転換ができないから、右の谷を気にしつつそろそろとバックすることであった。
 すこし広くなったところで、何度か切り替えしてやっとこさ方向転換。バックしながら山側の石なのか何なのかゴツンと当たった。
 「やれやれ」
 いったん下りて後ろを見る。ま、どこがどうと言うこともなさそうだ。
 結局のところ、片道100km近く走って、ガソリン代を使って、手弁当で林道の石を三個片付けに来たようなものだった。
 途中、ボディの下に木の枝が引っかかった様子。
 「やれやれ」
 車を停めて下を覗く。
 引き返しながら、「神仙平は僕にとって永遠の憧憬になるかもしれんなあ・・・」。


 「そうだ、山頂に神社のある山が三つある。櫃ヶ岳、銀峯山、栃原岳。この機会に行っておこう」
 
 大塔村役場まで引き返し、国道168号線を城戸で右折。
 十日市で迷いつつも櫃ヶ岳への林道を走る。車一台がやっと走れる幅だ。どうやら「やすらぎ村」へ抜けるようだ。
 林道最高点のあたりから山道が付いていた。きっとこのあたりだろう。
 手ぶらでひょこひょこ登りはじめ、あれかこれかとピークをいくつか踏んでみたけれど山名板がない。神社も見当たらない。東へ向かってずんずん歩くとマツタケ山なのか、秋になると立ち入り禁止の立て札があちこちにある。
 木から落ちるしずくやら、道ばたに生えている草木のしずくやらでズボンもシャツもびしょ濡れになってしまった。
 「こらあかんわ」
 腹も減ってきたし、車に戻り、昼御飯。
 「うーん、どうしたものか。十日市へ戻り、銀峯山、栃原岳へ行くか。でもなあ・・・」
 やすらぎ村からも登山道は付いているから、とりあえずそっちへ向かって車を走らせると道は遠慮なく下って行く。途中で「櫃ヶ岳ハイキングコース」の道標があった。コンクリートの道だ。車も入れそう。
 「行けるところまで」と狭く急な道を登って行く。途中、一度では曲がりきれずに切り返した急カーブが何箇所かあった。しかも急登である。そのうちの一箇所で、すこしバックして、サイドを引き、ローに入れアクセルを踏むと、ズルズルッと左前がスリップした。雨に濡れた山側の土にタイヤを取られているのだ。
 「あちゃー」
 もう一度やり直す。何とかクリア。
 こんな山中にもいくつかの民家があった。

櫃ヶ岳山頂 櫃ヶ岳八幡神社

 狭い急登を厚かましくも登って行くと、とうとう櫃ヶ岳山頂まで車で来てしまった。
 バチが当たらないように、櫃ヶ岳八幡神社には何度も手を合わせたことである。

 下りも用心しながらやっとこさ十日市まで引き返した。
 次は銀峯山。これまた地図を見ながら林道を走る。
 山をだいぶ巻くと視界が開けた。

波宝神社鳥居 波宝神社

 赤い大きな鳥居があった。波宝神社。式内社である。
 鳥居から神社までかなりな急登だった。道脇には野いちごがたくさん。
 鳥居そばには名古屋ナンバーの車が停まっていて、その持ち主だろう、「お参りついでに」とビニールの袋を見ると野いちごがいっぱい。
 僕もふたつみっつ摘んで食べた。
 雨はすでに止んでいたが山にはまだ雲がついている。展望はよさそうだ。
 
 さて、次は栃原岳。

波比賈神社 五条、橋本方面?


 唐戸、平原を過ぎ上栃原へ行くと波比賈神社の標識があり左へ折れ林道を走る。
 神社から金剛葛城、五条方面が見渡せる。
 社務所があったから由緒書をと思って声をかける。競馬中継が大音量で聞こえていたが返事はなかった。そうか、きょうはダービーなんだ。
 あきらめて「やっと予定終了」と靴を脱ぎサンダルに履き替える。
 車はどろどろ。
 なんせようがんばってくれた。
 山登りというより、かなり乱暴なドライブだった。
 今でこそ車で行けるけれど、かつては氏子の人たちは誰もが歩いて参詣したのだろう。

 下市に出ていつもの道を引き返す。

巨勢山口神社 百合

 ついでとばかり、いつもそばを通りながら見過ごしていた巨勢山口神社。参道に笹百合が咲いていた。

高天彦神社 蜘蛛窟


 これまたついでに高天彦神社へ。田んぼを挟んで山中にあった蜘蛛窟はいわゆる土蜘蛛のお墓かもしれない。
 途中の棚田では田植えの準備中だった。

 洗車して帰った。ご苦労さんやったね。