木梶山、明神平、桧塚。一蓮托生組、明神平に結集するの巻 (May 2/3, 2004)

 経験的にはエアリアマップの破線のルートも道になっているし、地図になくても行けば道はあるものだ。だから、千秋林道へは初めて入るけれど、千秋橋のすぐ上から菅谷川沿いの点線だってなんとかなると高を括っていたのは事実である。

5月2日(日)
10:10 千秋橋のすぐ上、地図で見ると菅谷川と木屋谷川の合流点。
 ゲートの横から堰堤に向かい階段を上がり突き当たりの左の崖はコンクリートで固められていてロープが一本垂らしてあった。
 切れそうな気もしなくはなかったが結局これに掴まって登った。
 ロープの支点から平行に、沢沿いに巻道がついていたが、途中から不明瞭になった。
 どうやらもう少し上にまともな道がありそう。木の根を掴んでガリガリと登ると、確かに道があった。でもこれも途中で不明瞭になった。不明瞭と言うよりもストンと切れて道がないのだ。どうやら渓流釣りの人たちが沢に下りる道だったような気がする。またもや木の根を掴んでガリガリと上へ。あったあった。
 あとで考えれば、ロープの支点からすぐ横へ巻いたけれども、もう少し登れば比較的まともな道があったのかもしれない。それでもしっかりした道とは言いかねる。数箇所谷側への崩落で危なっかしいところがあったからだ。
 そんな箇所で見上げたら崖の上に、遠目だったが角が二本、灰黒色の動物がいた。カモシカではないだろうか。

 地図ではカツラ谷を過ぎたところで、菅谷川を対岸に渡る。
 もうそろそろかと思われる頃、浅い沢が左から落ちていて右の菅谷川には堰堤がついていた。
10:55 堰堤
 ここだよな。
 堰堤の上流部は川幅は広かったが水はごくわずか流れているに過ぎず、浅瀬を二歩ほどで渡った。
 対岸には道はなかった。道のように見えなくもないが、果たして人の道なのかどうか。
 獣道かも知れない。あるいは、枯葉の吹き溜まりが道に見えたのかも知れない。
 再び地図を見る。点線もほぼ直登になっているが、いずれにしても道云々ではなく尾根まではガリガリと登るしかなさそうだ。ブッシュではないのが何よりありがたい。
 比較的登りやすそうなところを見つけながら右往左往したことである。
 やっと尾根に出ると伐採木が道を塞いでいる。やれやれ。
 右に避け左に避けあるいは跨ぎ、やっとこさ尾根を登りきった。どうやら木梶山と岳山を結んでいる稜線だろう。この稜線は案外穏やかだった。ほっと一息である。
11:45 林道と交差
 ちんたらちんたら歩くと林道と交差した。横切ってさらに稜線を歩く。
(注:稜線に出たあとこの林道と交差したのか、尾根上で交差したのか、定かな記憶ではない)

12:40 梅尾
 小ピークをひとつ越え、次のピークが梅尾。
 うーん。ずいぶん時間がかかった。まださほどお腹も空いてないからもう少し歩くことにしよう。
 さらにもうひとつ小ピークを越える。どうやら次が木梶山だ。
13:20 木梶山山頂直下
 そのピーク直下で風を避けて一本。ここでお昼にする。携帯も繋がるようだ。円さんに電話。
 RINちゃん、どんさん、森の音さん、ピッケル君、百さんが高見峠から明神平を目指しているとのこと。彼らの方が若干早いかも知れない。

木梶山山頂

13:40 木梶山山頂。
 ふう。やっとたどり着いたか。
 某山岳会の山名板に「失得恤(ウレ)うるなかれ」とあった。
 出典はよく分からないけれど、なにやら禅宗に由来しそうだ。
 私たちは本来無一物であるべきなのだろう。あれやこれやと鎧を纏うからこそ失得に拘ってしまうのだ。

 さて、霧のために遠望はなかったけれども、この木梶山からは穏やかな草つきの道でとても気持ちよかった。

14:05 分岐があった。地図は見た。
 がしかし、たいして考えもせずに左に取った。
 緩やかな尾根を徐々に下ると林道と交差した。内心「???」の気持ちはあったが、まだ間違いに気がついていない。
 林道を歩かずに山道を尾根沿いに歩くとまたもや林道に出た。霧のために遠望はないが、さすがにこれはおかしい。馬駈ヶ場へ行くのにこんなに下るはずはないのだし、そもそも林道が走ってること自体に納得がいかないのだ。
 「ここ」とはっきり分かるところまで引き返そう。
 今度は林道を歩くことにする。
 20mほど前にホンドキツネがいた。先日稲村小屋で見たのと同じだ。こちらに気がつくと一目散に逃げて行った。
 再び山道に入るところに看板があり、木梶山、かすかに馬駈ヶ場、赤ゾレ山、国見山と読める。やっぱり間違っていたんだ。
14:45 分岐
 先ほどの分岐まで戻る。もう一度地図を広げる。
 そうか、僕は千秋林道側へ下りる尾根を歩いていたのだ。
 もう少しまともに地図を見ていればよかったのに、分岐から右への道が小さく感じられたのでなんとなく左へ行ってしまったのだった。往復40分のロスである。
 うーん、縦走組の方が早そうだ。ま、仕方がない。

 ほどなく、と言うより一分でp1316、馬駈ヶ場ピークだった。これで間違いなく明神平へ行ける。
 この馬駈ヶ場から台高縦走路までの道はまるで庭園だった。天然の庭園だった。

馬駈ヶ場―天然の庭園 馬駈ヶ辻―ぴったりとここで出合いました

15:05 馬駈ヶ辻
 見覚えのある景色になってきた。そろそろ台高縦走路との出合、馬駈ヶ辻かと思うやいなやひょこんとRINちゃんの顔が見えた。つづいて、ピッケル君、どんさん、森の音さん、百さんの顔が。
 「おおおっ、なんやぴったんこやんか」

 あとはもう和気藹々だ。

15:45 国見山
16:10 水無山

 RINちゃん、どんさん、森の音さんは馬ノ鞍峰まで縦走の予定である。
 天候が下り加減なのが心配だ。
 僕は、明朝、桧塚から千秋林道へ下る予定。
 ピッケル君と百さんは今日中に千秋林道へ下り、某所へ行きましょうよ、と言う。
 「なんでよ。今から下りたって途中でヘッドランプが要るやろし、向こうへ着いたところで10時ぐらいになるんとちゃう? みなさん、もう寝てはるって」
 マナコ谷の駐車場ではピッケル君の車が僕の後ろにあるために動けないのである。
 そうか、だから、来ざるを得なかったのか。お気の毒なことだった。(^O^)

 明神平も霧の中、すでに10張りほどのテントがあった。
 僕たちは奥の水場の上に3張り設営した。

 水を汲み、RINちゃんのエスパースで宴会。
 天気が下れば明日僕たちと一緒に千秋側へ下る。小雨程度なら行くと言う。
 森の音さんは、「なあに晴れる晴れる」、みょうなところで楽天家なのである。
 どんさんは、「こんな機会は滅多にないのだから」と行く気満々。
 ちなみに、RINちゃん、どんさんは、今回の予定のコースを歩けば台高縦走を達成する。

 雪ちゃんから預かったビールを遠慮なく空ける。僕がひと缶、百さんは3缶ほど担いでたんじゃなかったかしら。で、乾杯。
 さばの味噌缶をこれまた偶然にもそれぞれが持参。
 焼酎を飲み、「鍋こかしたらあかんで」などと言いながらお湯を沸かし、それぞれが御飯を食べ8時には就寝。
 RINちゃんのテントから僕たちのテントまでわずかのところなのに霧のために見えない。
 ヘッドランプの光りがはね返されてしまうのだ。


5月3日(月)
05:00 起床。9時間、爆睡した。
 再び水を汲み、お茶やらコーヒーやら。僕はカレーうどん。
 相変わらず霧の中だ。さいわい雨にはなっていない。

 お互いがあれやこれやを済ませて、
06:40 ほな行くで〜。
 縦走組は初志貫徹だ。
 天理大小屋からゆっくり登る。明神岩を右に見て、明神岳へ。
07:15 明神岳
 ここで、縦走組のRINちゃん、どんさん、森の音さんと別れることになる。
 それぞれに握手を交わして健闘を祈る。
 何よりも天候だけが気がかりだ。

幻想の森

 ピッケル君、百さん、僕の三人は桧塚奥峰を目指す。
 霧に包まれて、静かで幻想的な森の中を歩いた。
 雪がなければ道はしっかりしているが、道中間違えやすいところもある。
 左に曲がり右に曲がり、
08:00 桧塚奥峰
 残念ながらガスに包まれて遠望はなかった。

 桧塚へ向かう。
 僕は桧塚から千秋林道へ下る道と言えば、桧塚から向こうへ道がついているからてっきりそれを下るものと思っていたが、経験者のピッケル君によれば、そうではなく、桧塚手前の草つきの尾根を左に下るのだと言う。たしかに、道はついていた。
 桧塚までは明神平から何度か来たことはあるけれど、ここから千秋側へ降りたことはないのだ。
 その分岐にザックを置き空身ですたすたと桧塚まで。
 香肌峡側から千秋谷側へすうっとガスが流れていく。

08:25 桧塚
 引き返して分岐でスパッツをつける。
 下りかけると鹿の骨があった。
 「これは骨盤とちゃうかな。これは大腿骨。これは・・・」
 何か言ってたけれども、よくわからない。
 ピッケル君は専門家である。それぞれの部位の大きさからこの鹿は子供ではないかと。

千秋峰から、国見山、水無山、青空 振り返って桧塚

 さて、この道は僕は初めて下る。
 一気にガスが切れて青空も見えてきた。
 きのう歩いた菅谷川北側の稜線が見える。たぶん、あれが梅尾であれが木梶山だ。
 左に振ると、国見山、水無山。
 行ったことのない山だと漠然と見るだけだが、じっさいに歩いた道だからとても親密な気持ちで眺められる。
 振り返ると、桧塚、および奥峰。
 馬鞍への縦走組もきっと青空の下を歩いているに違いない。
 サポートらしきこともしてやれないけれど、事故もなく予定をこなしてほしいと思う。

 道は桧の植林帯に入り、林道をショートカットしながら小気味良く下った。
09:45 林道着。
 駐車場まで10分ほど歩いた。
 聞けば百さんはピッケル号にお風呂セットを積んでいたとのこと。
 「何やぁ」、ってことは僕たちも一蓮托生やったんやぁ。(^O^)
 
 それから「みのや」で風呂に入り、円さん一行がすぐそばで待ってくれていて、
 「やあやあやあ」と、超感激して再び合流したのでありました。



写真集

ピッケル君:北部台高縦走

 きょう5月4日。馬ノ鞍峰へ縦走したRINちゃん、どんさん、森の音さんも無事に下山されたとのこと。幸いにも雨には遭われなかったそうです。
 やったね。おめでとうございます。


森の音さん:台高山脈縦走(高見山〜馬ノ鞍峰)

どんかっちょさん:台高北部大峠から馬ノ鞍峰縦走