ヂトウ


 座敷に床がふたつ離して延べられていた。ここは僕の実家。
 僕はヂトウを引き寄せて唇を重ねた。
 
 「ちょっと、なにすんのよ。いやよ」
 ヂトウは僕を突き放し、唾を吐きかけた。
 ヂトウは部屋を出るでもなく、背を向けたままだ。

 唇の柔らかさ、唾の飛沫、その感触だけがやけに記憶に残っている。


 
Sept.24, 2003