黒戸尾根から甲斐駒、鳳凰三山 (Jul.22/25. 2005)

 前回の山帰りの車中で、どうやら僕は、次の甲斐駒、鳳凰三山は黒戸尾根から三泊でやることに決めてしまったようである。一日の行程時間をできるだけ短くしたかったことが理由だが、結果として、日暮れまでに着かなければならないという強迫観念ではなく、日暮れまでに着けばよいという余裕を持って歩くことができた。とはいえかなりハードなコースではあったが、初日、二日目、三日目とそれぞれ特徴のあるコースを歩くことができた。

7月21日(木)
 9時に帰宅し、ザックを作り、風呂、晩御飯。酒を飲まなければ淡々と事が片付いていく。11時半出発予定であったが、11時が近づくともう所在無く、「ほな行ってくるわ」とホワイトボードにコースを書く。
 黒戸尾根―甲斐駒―早川尾根―鳳凰三山―御座石鉱泉。月曜午前下山予定。

 西名阪、名阪と走り、東名阪に入る頃から眠たくなった。何度もあくびが出て、レーンを跨いだ。
 御在所SAで仮眠。車の時計は故障なのかデジタルが表示されない。腕時計はバックライトがないから暗くて分からない。ルームライトで確認するのも億劫、そのままシートを倒して即寝てしまう。
 目が覚めて熱いコーヒーを飲みながら再出発。2時半を回ったところだった。
 少なくとも一時間は寝てたように思う。名古屋のややこしい高速の乗り継ぎも料金所のおぢさんに聞いたけれども間違わずに中央道に乗ることができた。
 あとは快適だった。夜は白じらと明けかかる。
 諏訪湖を過ぎ、左に八ヶ岳が見える。右は、どうやら鋸、そして甲斐駒が見える。「あれか〜」。右斜め前には鳳凰三山のオベリスクが見えた。
 小淵沢インターを過ぎ、八ヶ岳SAで小休止。冷たいジュースを飲む。長坂インターで下り、地図を見ながら竹宇駒ヶ岳神社前の駐車場に着いたのが6時20分だった。2台停まっていた。かつては甲斐駒への本道だったらしいが標高差を嫌って最近はここから登る人も少なくなったという。
 キャンプ場入口にもなっていて町営の無料駐車場がある。歓迎の意だろうか、花が活けてあった。
 「あれ? ヤマユリとちゃうの?」
 ヤマユリの実物は見た記憶がない。あったかもしれないが少なくともそれと意識したことがなく、感激してしまった。そろっと鼻を近づけ匂いをかぐとめしべの尖端の粘液が鼻に付いてしまった。「あらら」と顔を引っ込めると隣のヤマユリに毛虫がいた。
 活けてたぶん日にちが経っているものと思われ匂いそのものは少し爛熟していたように思う。

駐車場のヤマユリ(活けてあった) 登山口の竹宇駒ヶ岳神社

初日
7月22日(金)初日:黒戸尾根を七丈小屋まで。
06:50 おにぎりを食べ、準備を済ませ、では行こう。
07:00 竹宇駒ヶ岳神社。
 吊り橋を渡りいよいよ山道である。駒ヶ岳までは標高差2200m、きょうは七丈小屋までだし、標準のコースタイムは6時間40分。標準通りであれば、2時前には小屋に着く。もっとも荷も重いし急ぐ必要もない。日暮れまでには数時間の余裕がある。ゆっくり登ろう。いや、ゆっくりしか行けないけれど。
 比較的なだらかな道だったが、一時間も歩くとかなりきつくなった。睡眠時間のせいか、荷が重いのか。水は、お茶が1.4L。ジュース0.3Lである。七丈小屋までだからたぶん足りるはずである。
笹ノ平 刃渡り

09:30 笹ノ平
 印刷した記録では平坦と急登が交互に続くようだ。一時間歩いて10分の休みが、以後、50分、45分歩いて15分の休みになった。
11:25 刃渡り。しばしば写真で見かける。鎖もあり難なく通過したところで一本。トマトを食べる。
12:15 刀利天狗神社。
 ここからまだ登る。ちょっときついぞ。白い石楠花が咲いていた。
 五合目の鞍部に下りる手前できょう初めて人に遭った。
 鞍部に下りかけると小屋があった。もう一段下りるとここが最低鞍部である。

五合目の鞍部 垂直のハシゴ

13:30 正面は岩壁になっていて小さな祠があり、お地蔵さんやらお不動さんやらが幾体も祀られてあった。甲斐駒も信仰の山であり、古い歴史があるのだろう。
 地図には水マークがあったけれど、結局それがどこだったのかわからなかった。
 ゆっくり一本取って、階段を登る。以後、ハシゴ、鎖場と続く。しっかりしてしかもわりと新しく見えた。安心して登れる。一気に高度を稼ぐが、腕も使わなければならず、これもきつい。それにしてもこんなとこにハシゴ、階段を付けるのも大変だったろう。なぜか垂直のハシゴだけが古いままだった。
15:25 七丈小屋。

白い石楠花

 ふう。やっと着いたぞ。すでに数人がくつろいでいる。
 受付へ行くとテントは僕だけらしい。テン場へはここからまたハシゴを登る。ザックを置いて先に水を汲んでおこう。水はふんだんにあるようで蛇口は開いたままだ。
 整地されたテント場だ。正面にオベリスクが見える。
 
 お湯を沸かしまずは明日のお茶用に。アルファ米に注ぎ、それから焼酎。睡眠不足だからきょうはよく眠れるだろう。
 ご飯を食べ、テントの出入り口を開けたまま空を見ながら結局眠ってしまった。
 夜中、雨が顔に当って目が覚めた。「おいおい、雨か?」
 その雨も一瞬だったようである。



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