南奥駈―釈迦ヶ岳から玉置山へ (May 3/5, 2007)
二日目:剣光門(笹の宿跡)から葛川辻へ
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夜明け。天気良さそうだ。 |
5月4日(金)
夜明け前に起床。五時過ぎに朝日が昇った。
「11時間寝てまっせ」
頭は薄ぼんやりしたまま。朝ごはんはきのう残したご飯に梅干茶漬け。ドラ焼き。
水はちょうど1L残っている。これならきょうのテン場葛川辻まで補充せずになんとか行けそうだ。
06:10 僕たちは握手をして別れた。
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早朝の南奥駈道。 |
僕はこんな景色が好きなようだ。 |
休養充分であるし、アップダウンも軽快にこなす。
早朝の山道は気持ちがいい。
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06:35 笠捨山ははるか先だ。 |
06:30 涅槃岳
06:55 誠証無漏岳
07:25 阿須迦利岳
07:40 持経の宿
国の環境調査だとかで係りの方からいろいろとアンケートがあった。
「山では何がもっとも大事か?」
「そりゃあ、一にも二にも水場です」
そうは言いながら、この持経の宿と行仙宿と補給地点がありながらわずかの重さを嫌ってそれをせずに渇きに苦しんだのは僕自身だったのだが。
お礼に飴玉を貰った。
08:50 平治の宿
西行の歌碑がある。小屋もきれいになっていた。
09:25 転法輪岳
遠くに見えていた笠捨山がだいぶ近づいてきた。
09:55 倶利迦羅岳
さすがに疲れてきた。
横駈から怒田宿跡までは無心に歩いた。いや、正確に言うと口外する必要もない想像事に捕りつかれていたと言うべきか。単独で歩いているとき、みんなはいったいどんなことを考えているんだろう。
11:10 怒田宿跡
いよいよ行仙岳への急登だ。
一本取ってもよかったが昼食には早い。いっそのこと登りきって山頂で休もう。
時間的にはわずかなのだが何度も立ち止まっては天を仰いだ。
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行仙岳山頂―すぐそこなのに急登なのだ。 |
行仙山頂より―左奥の高まりが釈迦ヶ岳 |
11:30 行仙岳
登りきるとさすがにひと安心。風が通って気持ちいいが陽射しがきつい。
とりあえず一本。
世界遺産に指定されたせいか新しい道標が立っている。どうやらここが今回の行程のほぼ真ん中である。やれやれまだ半分か。ずいぶん南に下ったような気もするけれど。
ここでは携帯が通じる。18通受信し、「道半ばなり」と発信。
暑いから、下って行仙小屋でご飯にしよう。
ピッケル君は昨晩ここで泊まって歓待されたそうである。
2001年のGWと11月下旬の二回、同じコースを歩き、ともにこの小屋でお昼にしたが、なにやら小屋数が増えているようだ。しかも思ったより遠く感じた。
「ちょっと休ませてくださ〜い」
「どうぞどうぞ。靴脱いだ方がいいよ」
お言葉に甘えて靴を脱ぎ、靴下も脱ぎ上がり口に腰掛けた。
「どうぞ上へ」
「いえいえ、この方が楽ですから」
「きょうはどこまで?」
「葛川辻でテントです」
「ビールと言いたいところだけどまだこれから歩くんやもんな」
昼ごはんは、濡れおかき。ひと袋食べるとお腹いっぱいになる。
グラノーラとプチトマト。
水は500mlの二本目である。
笠捨山まで持てばあとは下って水場へ行けばいい。
最年長氏「笠までワシは1時間50分かかるで」
やや若い御二方「そうねえ、1時間半かな」
再び靴を履き、どうもお世話になりました。
「なんのおかまいもしませんと」
「いえいえ、ありがとうございました」
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旧行仙宿跡 |
笠捨山頂が見えてきた。 |
小屋を出たのが12時半を回った頃だったか。おそらくピッケル君はそろそろ下山している頃かと思う。
笠捨への道も急登だ。あそこかと思うとニセピークだった。気分はぐったり。
思わず座り込んで水をがぶがぶと飲んだ。山頂に飲む分をふた口ほど残す。
「ふう」
足を出さない限り前へは進めない。無心にじっとがまん。
ようよう山頂が見えてきた。
14:35 笠捨山頂
「ふう。二時間かかったぞ」
行仙への登りとこの笠捨への登りが一番きつい。
チョコレートを食べ、水を飲み干し、飴玉をくわえると口内の水分が一気に飴玉に吸い寄せられたかのようだ。むしろカラカラになってしまった。ガリガリと噛むと口内がねっとりとする。空のペットボトル、ポリタンを逆さに一滴一滴を飲む。
「やれやれ」
あとは下るだけだからゆっくり休もう。
そうこうするうちに一人。
深仙宿から来た、玉置神社まで行くと。
「ええっ?」
「行けますよ。あと12kmでしょう?」
「僕は葛川辻までですわ」
「水場ありますよね。僕もそこでゲットしようかと」
さして休むこともなくスタスタと下られた。
では、僕も行くか。急斜面を下り植林帯に入る。
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葛川辻 |
15:20 葛川辻
何よりもまず水だ。
が、水場への下り口は伐採木の巣になっていて、「おいおい、これを跨ぐのか」、その先も道が不明瞭である。
真下を見るとこれまた急斜面だが、下りれないこともなさそう。だけどこれを登り返すのはしんどいぞ。ピッケル君はここを下ったのかな。でも、やはり知ってる水場へ行こう。
2Lのポリタン、500mlのペットボトル二つ、ストックを持ち、枝や幹を跨ぐ。枝の先が膝に刺さる。「いたっ」。じんじんするのが治まってまた跨ぐ。ようやっと伐採木を過ぎ、あるかなきかのなんとはなしの道を歩く。小さな尾根を跨ぐと赤テープがありやっと道らしくなったがその先にもまた伐採木の巣があった。その巣を越えると水場だ。慎重に跨ぐ。ここで落ちたらアウトである。
ようよう水場にたどり着くと、ちょうどペットボトル一本を差し込める隙間があった。半分くらいになるとまずごくごく飲んだ。それを二回ほど繰り返した。
満タンになったら2Lのポリタンに移す。誰もいないこんなとこで何やってんだか。
もう一度ごくごくと飲み、都合3Lを持って帰るのだが重いし片方にはストックを持っている。一つをズボンのポケットに押し込んだ。
慎重に伐採木を抜けると往路よりやや上を歩いていたようだ。赤テープが下に見える。ずりずりと赤テープまで戻り、最後の伐採木を跨ぐ。またもや枝の先が膝の上を刺す。「ううっ」
やっとこさテン場まで戻ったことである。残念ながら写真を撮る余裕さえなかった。
水場への道なんだから何とかして欲しいものだが、植林帯であるから山林主の許可がないと勝手には触れないのかもしれない。
とにかく水を得た。焼酎を割る。飲んでいるともう一人笠捨山から下りてこられた。彼もまた深仙宿からだと言う。あすは一気に熊野本宮までと。
「やるね〜。僕はあす玉置神社までですわ」
「ただ、天気が下るみたいで」
「そうみたいね。どちらから?」
「奈良です」
「僕は大阪だから、もし良かったら明日お送りしますよ。車は玉置神社にあるし」
「いえいえ、熊野まで。でも車はどうやって?」
ピッケル君とのことを話すと「なるほど〜。眼鏡をかけた人ですよね?」
「そうそう」
すれ違うとき話をされたようだ。
三日目:葛川辻から玉置神社