山ノ神ノ頭から池木屋山、赤クラ山から白鬚岳へ、粛々と。 (Apr.22/23, 2006) |
赤クラ[山/品]山から白鬚岳への東西に伸びる稜線を歩いてみたいと以前から思っていて、林道北股線を様子見にドライブしたこともあるのだが、なかなか妙案が浮かばない。
結局のところ台高縦走路を赤クラ山に登り、西の白鬚岳に向かうしかなさそうだ。
台高縦走と言えば、ピッケル君は、池木屋山から大台ヶ原の川上辻までを歩けば三峰山から尾鷲までが繋がる。
打診すると「ぜひ」と言うことになった。
初日、三之公から山ノ神ノ頭へ登り、台高縦走路を北上、馬ノ鞍峰、弥次平峰を経て池木屋山で幕営。
二日目、赤クラ山から白鬚岳、東谷出合へ下山。
三之公から登ると水場が霧の平にあるから、そこでテント場と翌日の水が補給できる。水場が東谷出合の上にある白鬚側から登るより比較的楽になる。
両日ともに長距離になるが日も長くなってきた時節である。なんとかやれそうな気もする。
急がずあわてず粛々とやろう。
三之公から馬ノ鞍峰に登らず、大台側の山ノ神ノ頭にしたのは、いずれこの続きをやることを考えると、山ノ神ノ頭から川上辻なら一泊でやれると思うからだ。
忙しそうなピッケル君に日程を任せてこの日になったが、夜には雨になりそうな予報であった。希望的観測を含めてのことではあるが、さほど降らないだろうし、風もそれほどでもなさそう、「行きましょう」と意見が一致した。
4月22日(土)
06:30 川上道の駅集合。眠たそうなピッケル君だ。
一台を東谷出合にデポし、三之公へ向かう。天候は曇り。高曇りだ。
07:30 三之公登山口 | 08:45 岩屋 |
07:30 三之公
沢を渡っていきなりの急登。体が重い。疲労防止にクエン酸を飲んできたが効いてるのかどうか。久しぶりのテン泊の装備でもある。
昨年の円遊会で初めて登ったルートだが、こんなにきつかったかな? なんせその時は二日酔いでよく覚えていない。
09:20 山ノ神ノ頭へ | 09:30 山ノ神ノ頭 |
09:30 山ノ神ノ頭
ふう。のっけからかなりきついぞ。
ここから台高縦走路に入る。
2002年の9月、馬ノ鞍峰からこちら側へ歩いたがその時の記録を読み返しても、冒頭に
> とにかくしんどかった。アップダウンがきつい。まっすぐ登ってまっすぐ下る。それの連続だった。
と記すとおり今回も同じことを繰り返した。テントを張った地池越と山ノ神の頭へ尾根を渡る箇所くらいしか覚えていない。
その記録に
> 馬の鞍峰から添谷山までが、台高縦走路の核心部ではないだろうか。
と書いたがやはりそうだと思う。
12:30 馬ノ鞍峰
しんどいとは言え3時間だから順調な部類だろう。ここで昼食。
13:40 霧の平
霧の平 |
ダルマの黒い瓶が今も残っている。
谷をわずかに下り水を汲む。テント場と明日使う水だ。
2002年の11月、D氏、百さんの三人で、ここで幕営した。
翌日空身で池木屋山をピストンした。大縦走ならともかく台高を小刻みに繋ぐとすればこうするよりない。その時は吹雪の中をひたすら歩いた。
行動時間も7時間を過ぎ、しかもお互い3Lくらい重くなったせいか、途端にペースが落ちる。いくつかのピークをふうふう言いながら越えた。小休止の回数も増える。
15:15 弥次平峰へ | 15:45 弥次平峰 |
15:45 弥次平峰
やっとここまできた。地図の標準タイムでは、池木屋山までまだあと二時間半だが、もう四分の三は過ぎた。あと四分の一だ。
「もうすぐだって」
「郭公さんの、もうすぐは、あてにならんからなあ」
「いやいや、ほんま。もうすぐだって」
さいわいまだ雨はない。谷を挟んできれいな三角錐が見える。赤クラ山だったのだが、じつはこれを池木屋山と勘違いしていて、歩くにつれ近づきはするけれどなかなかたどり着かないのである。直線距離は近いものの稜線はぐっと湾曲しているのだ。
その後地図を見ると、
「いや、あれは池木屋山とちゃうで。赤クラ山やで。そやから池木屋山はもっと近いはずや」
日は長くなっている。急がずあわてず粛々とやろう。
ホウキガ峰を下り鞍部で一本。きょう最後の池木屋山へはあとわずかの登りだ。
とうとうポツリポツリと雨になった。雨具を着けるほどではない。
ところどころに雪が残っていた。
18:45 池木屋山。フラッシュを焚いたから暗く見えるが、まだヘッデンも要らなかった。 |
18:45 やっと池木屋山だ。
ほんの少し下ると小屋池。きょうのテン場だ。
さすがにここでヘッデンを点けた。
テントになだれ込むと雨音はやや強まった。
「ふう〜。お疲れさん」
お湯を沸かし明日のお茶を作り、アルファ米に注ぐ。お湯割りで飲む。
ピッケル君がプチトマトを。
「美味い、めっちゃ美味いで」
プチトマトってこんなに美味しかった? 生鮮食料のありがたさを痛感する。
ご飯もしっかり食べ、寝たのは9時前だったか。
4月23日(日)
5時を回ってピッケル君に起された。
小屋池の朝、晴れていれば真横から日が射し、ブナが長い影を引く。
残念ながらきょうはガスの中だけれど、僕のお気に入りポイントのひとつ。
雨に濡れてテントが重いぞ。ピッケル君がポールを受け持ってくれる。
06:20 雨の小屋池 |
06:20 雨具を着けて出発。さいわいたいした雨ではなかった。
07:30 赤クラ山
急斜面をズリズリと下る。ここから初めての道だ。
北側は草つきの穏やかな斜面だ。下りきると稜線も穏やかである。
「ええやんか〜」
霧の中の穏やかな山道も悪くない。
その稜線上の随所に、ピッケル君曰く、
「これは熊の糞でっせ〜」
「そ、そうなの?」
いくつかの小ピークを越えたけれども、それが地図のどれになるのかはっきりしない。
雨は降ったりやんだりしたが降ってもたいしたことはなくむしろ枝から落ちる水滴で濡れる程度だった。
08:30 或るピークで小休止。
下ると尾根がふたつに分かれている。
「ん、どっちや?」
ピッケル君、磁石を出し地図と見比べる。まず、僕たちが何処にいるのかが定かではない。とりあえず双方の尾根を少し下ってみることにした。一方は行き止まり、深い谷になっている。もう一方の尾根も北へ下っている。
「郭公さん、これはちゃいまっせ。北の谷でっせ」
と言うことは元へ戻った方がいい。さきほどの小休止地点まで登り返さざるを得ない。
09:30 ピークに戻るともうひとつ尾根が走っていてそっちにテープが付いていた。
藪っぽかったからまったく考慮していなかったのだ。
「なんや〜」
一時間のロスだったが仕方がない。
ガスの中ではどの方向に山が続いているのか判然としないのが辛いところだ。
地図と照らしながらどうやらここがp1275だったと結論したのはもう少し後になってからである。地図にはいくつかのピークをポイントとして記しているけれど、実際にはもっと小ピークがあるためにどれがどれなのかよくわからない。
10:20 次のポイントでは南にも尾根が下り道がついていた。ここがp1238ではないか。
10:40 やっと山名板のあるピークに来た。高塚である。
ここにも北に道がついている。間違えやすいところだ。ピッケル君は慎重に方角を確認する。
西にいったんがくんと下るが、ここからの道がまた良かった。山道を歩く醍醐味だ。
戸倉山 |
11:15 戸倉山
広々とした草つきの斜面を見下ろしながら一本。
腰掛けようとした太い倒木がボキッと折れてピッケル君はひっくり返りそうになった。
好天ならばこれから行く登尾も白鬚も見えたことだろう。
登尾への急斜面をガリガリと直登する。こんな急斜面でも軽々と飛んで行く鹿になりたい気分だ。
登尾の手前のピーク。 |
12:05 南へ下る尾根と西の登尾への分岐のピーク。
空身で登尾へ。ほどなく展望の利くピークへ。地図には三角点になっているが、境界尾根によくある杭のようにも見える。
「これか?」
「そうちゃいます?」
ってことで分岐に引き返した。
(さきほどネットで調べると登尾はここからいったん鞍部に下りてもうひとつ西のピークだったようである)
昼食にパンを齧り、お茶を飲む。行動食はかりんとうだ。
尾根の東側にはネットが張ってあり桧の植林帯である。数箇所に新しいネットのかたまりがあった。そばの木に白いワイシャツが袖を広げて縛ってある。誰かの忘れ物かとも思ったがふたつもみっつもあり、どうやらヘリコプターで資材を下ろす際の目印かも知れない。
二重山稜になっていてどっちに乗ったものか迷うところもあった。左の寄り高い尾根に乗ったが結局右の尾根に戻った。
13:20 高尾山
14:05 大鯛山
ここから林道へ下りれる道があるようだ。
いよいよ今回最後の白鬚岳への登りだ。鞍部から標高差およそ250mくらいか。
この白鬚岳は遠くからでもそれとわかるピラミダルな山容である。その急斜面を登らなければならない。登りやすいところを選びながらほぼ直登。途中で一本取ったけれども、もはや無心。ひたすら、足を前に出すと、柏原辻へ下る尾根の緩斜面に出た。
15:10 急登から柏原辻への尾根へ。 | 15:15 白鬚岳の裏側 |
15:20 白鬚岳山頂 | 16:55 小白鬚 |
15:20 ついに白鬚岳山頂である。やったね。9時間かかったぞ。
山頂には単独者が。二日目の最後で初めて人に会った。
携帯が通じたので仲間に報告。
粛々と言いたいところだけれど、じつはヘロヘロだった。
下りかけるとおそがけながらもう一人登って来られた。
小白鬚から東谷出合へ。何度も休み、岩屋から滴る水をポリタンに詰めた。
18:45 東谷出合。日暮直前、無事下山。
ピッケル君:台高核心部縦走―山ノ神ノ頭〜池木屋〜白鬚岳