鈴北、御池、藤原岳−鈴鹿全縦完了の巻 (Nov.30/Dec.1, 2002)

 昨年、TOHRUさんが4回に分けて鈴鹿縦走を計画された。
 第一回目は別の山行のために欠席したけれども、第二回目、三回目、そして最終回と参加するにつれて、その第一回目の欠席が何とも悔やまれた。
 「いつかきっと」と思いつつも、登山口と下山地点の交通アクセスのことを考えれば一人ではできない。また、治田峠を下って青川峡の沢を何度か徒渉するけれど、あいまいな記憶のために正直言って一人では自信がなかったのだ。
 仲間内で鈴鹿といえばRINちゃん、TOHRUさん、それにpanaちゃんを措いて語れない。
 そのpanaちゃんが9月にこのコースを提案されたが残念ながら雨のためにいったんは中止になった。11月下旬、ふたたびこの話が持ち上がった。
 「ぜひ行きましょう」

11月30日(土)
 目が覚めたのが5時50分。「あちゃー、遅刻だ」。6時10分に金剛で待ち合わせているのだ。顔も洗わず大急ぎ。シガさんから電話。彼もまた間に合いそうにないと。名阪の大内で待ち合わせることにする。紅茶を半分飲み残して駅へ向かう。
 6時15分、金剛駅。
 milionさんとhiroさんはすでに待ってはる。
 「ごめんごめん、遅刻してしもた」

 車中にて、
 「あれ? 俺、電話持って来たかな? しもた、シガさんと連絡せなあかんのに?」
 赤信号のときザックの中を見るけれども見当たらない。「あちゃー」
 hiroさん
 「電話してみよか?」
 車内のどこからも「大脱走のテーマ」が聞こえてこない。
 「やっぱり忘れてるんや。シガさんの番号は控えてるからなんとかなると思うけど」

 名阪の大内に着いたのが7時半を回った頃だった。駐車した真向かいの車、登山姿のおにいさんがトランクを開けてごそごそしてはる。和泉ナンバーだ。
 「ひょっとしてシガさんですか?」
 「そうです」
 「どうも、おはようございます。郭公です」
 「ああ、どうも」
 「いやいや、電話を忘れてきてしもて」
 「かけたんやけど、留守電になってましたわ」

 手洗いなどを済ませてふたたび車に乗り込むと助手席に僕の電話があった。
 「なんやぁ、milionさんがケツにひいてたんやぁ」(^o^)
 「ほんでも、音鳴らへんかったよね?」
 hiroさん
 「いや、かすかに聞こえていたような気もするよ」

 8時半すこし前に待ち合わせのコンビニに到着。
 RINちゃんが来る。
 「TOHRUしゃん、用事ができたもんやで、あとからコグルミ谷から直接テント場まで行くゆうとるで」
 旅人さん、panaちゃん到着。
 「安芸ちゃんと雪ちゃんも来るから。明日仕事やから今日だけの日帰りになるんやて」
 ほどなく和歌山姉妹到着。雪さんとはずいぶん久し振りのような気がする。春の藤原の福寿草以来かな?

 車は4台。まず下山地点の青川峡に2台をデポ。残り2台に分乗して鞍掛峠へ。さらに1台をコグルミ谷の登山口に回送。安芸さん、雪ちゃんはきょうここへ下る。

10:20
 いよいよ出発。風はなく陽も射して暖かい。じんわりと汗ばんできた。鞍掛峠まではやや登ったけれど尾根に出ると緩やかな勾配だ。遠くから「ドーン」と重い音が何度も聞こえて来る。
 「何の音やろう?」
 猟銃の音にしては重いような気がした。石灰山の発破だろうか? それにしては頻繁すぎるようにも思われた。
 田舎にいた頃、孟宗竹の節を抜いて、カーバイドを入れ水を垂らしガスを発生させ、そこに火を点けると「どーん」と爆発音がする、それで水田のスズメを追っていたのを思い出した。「それちゃうか?」とも思ったけれど、この時期、もはや稲刈りも済んでいる。
 結局何の音だったんだろう?
 
 解けかかった雪を踏みながら、あれやこれやと話が弾む。

12:10
 鈴北岳。日本庭園まで下りて昼食。広々として気持ちがいい。所々に岩が露出していてなるほど庭園ふうだ。あちこちに窪みもある。
 藤原岳以南の鈴鹿とはどうも様相を異にしているように思う。むしろ霊仙に近いのではないか。ガスったら迷いそうだ。

 いなりと巻きずしのコンビニ弁当を食べ終えると何やら手持ち無沙汰だ。
 安芸さん雪ちゃんからトン汁のお裾分け。
 「美味い、美味い。このジャガイモがとろっととろみになって」
 「じゃがいもちゃう、かぼちゃや」
 「おっ、そやった、そやった」
 さらにコーヒーをいただく。

13:40
 真の池を過ぎ、御池岳へ。年配の人たちのツアーと出会う。
 途中ザックを置いてボタンブチへ向かう。正面に奥の平。
 「木が一本見えてるやろ。あれが主やねん。冬、ここにテント張ったら気持ちええんやで〜」とpanaちゃん。
 ボタンブチとはイノシシが追いつめられて逃げ場を失うところから名づけられたらしい。たしかに西側は切れている。展望もよい。
 「あれがT字尾根」「ふむふむ」

 幸助の池
 「うっとこの息子、こうすけゆうねん」とpanaちゃん。
 「ほんま? うちの息子もこうすけやで」と雪ちゃん。
 「すけは田村亮の亮やけどな」

15:35 
 雪の中を真の池の分岐までぐっと下り、カタクリ峠へ。
 安芸さんと雪ちゃんはここからコグルミ谷を下る。和歌山から高速をすっとばして来てくれたのだ。
 「TOHRUさんと会うかもよ」「もう真の谷まで来てはるやろか?」

 なぜなんだかよくわからんけれども、ここから誰もが枯れ木を両手に抱えてあるいはぞろぞろと引き摺ってきょうのテン場へ向かう。谷沿いの道はつい先日panaちゃんの山行記で見た記憶あり。
 「ここか?」「そうやで」
 そうこうするうちにTOHRUさんが出迎えに。
 「おお、もう来てたんやね」

 テント場について設営。
 「あれ? ポールがない。あちゃー、忘れてきたんや」
 「きっと出てくるって」とhiroさん。
 ザックの中のものを全部出しても、ないものはない。何十回となくテン泊の経験はあるけれどもポールを忘れたのは初めてだ。やっぱり朝バタバタしたのがいかんかったのか。
 テントにくるまって寝るか、シガさんとこに泊めてもらうか。
 あきらめてシガさんの設営を手伝う。
 ザックに再び荷物を詰め込んでひょいと横の石を見ると灰色のポールを入れる袋があった。僕のに非常に良く似ているけれど、僕はてっきり忘れてきたものと思い込んでいる。
 「このポール、誰の?」
 見回すと全員ちゃんと立っている。
 「ってことは、僕の? なんやあ、忘れてなかったんやぁ」
 なんだか、ぼけてるんか、ぼけてないんかわからへん。
 そそくさと設営して、所帯道具だけ持って焚き火の周りに。
 
 お湯を沸かし、焼酎を飲む。panaちゃんからししゃもが回ってくる。
 晩御飯はうどんをふた玉。アルファ米も持ってきたけれど腹いっぱいで要らなかった。
 旅人さんやシガさんから沢の魅力を聞く。
 旅人さん「一歩一歩が新鮮なのだ」と。

 煙を避けながら火の周りをぐるぐる回りながら遅くまで話が弾む。
 「酒、もうあらへんのかな?」とM氏。
 

12月01日(日)
 6時半を回った頃、みんながごそごそと起き出す。
 「誰やぁ、6時起床ゆうてたんは」(^o^)
 「このフリース高かったのに穴開けてしもた」とhiroさん。
 きのう雪ちゃんにもらったコーヒーをいれて、パンをかじる。
 

08:10 出発。
 白船峠までの巻道に、たぶん「なめこ」がびっしりと生えた木があった。
 時々きのうとは違う、銃声が聞こえた。
 「八風峠の射撃場からやろか?」
 「そらなんぼなんでも遠すぎる。治田峠を越えて、石榑峠を越えて、その向こうやもん」
 「でへ、ほんまやね」
 白船峠から鉄塔へ上がると、近くは御池の奥の平、はるかに霊仙、さらにその奥には伊吹が望まれた。




 藤原岳への分岐にザックを置き、天狗岩へ。
 ボタンブチといい、天狗岩といい、案内がなければ素通りしそうだ。
 天狗岩からピラミダルな藤原岳が見えた。

 ようやく見覚えのある道になった。春、福寿草を見に藤原岳に登ったとき散策した道だ。と言うことは小屋も近い。まもなく屋根が見えた。

10:40 藤原岳避難小屋。
 パンをかじり、雨具の下をつける。薮を漕ぐ、藤原からの急な下りがドロドロかもしれない。靴を履いたまま雨具をつけるから雨具の中が泥で汚れてしまうので、panaちゃんは靴にスーパーの袋をかぶせる。
 「汚れなくてええやろ?」
 「なるほど」
 わあわあ言いながら身支度をし、どろどろの道を藤原岳山頂へ。それから治田峠を目指す。急な下りが延々と続く。膝が痛み出した。雪もついてなくて、道もさらさらしていたのが何よりありがたかった。
 TOHRUさん、RINちゃん、シガさんはまるでカモシカみたいにあっという間に下りきってしまう。

12:35 
 蛇谷への分岐で一本。
 治田峠はもうすぐらしい。
 「そうか、もうすぐか。もうすぐ鈴鹿縦走完了か」
 
 「郭公さん、ちょっと待っててや」
 「なんよなんよ」
 「ええからええから、来たらあかんて」
 治田峠では、みなさんがアーチを作って出迎えてくれた。
 みなさん、ありがとうございました。

 確かに見覚えがある。昨年の5月19日。第二回目の鈴鹿縦走。僕にとっては初めての鈴鹿だった。
 青川峡から数度の徒渉のあと青の洞門を過ぎ、急登をあえいでこの峠まで上がった。
 縦走路と滋賀県側と三重県側を結ぶ街道が十字路になっているところだ。panaちゃん、旅人さん、TOHRUさん、DOPPOさんと歩いた。
 その初めての鈴鹿の縦走路上の治田峠で、今回鈴鹿全縦を終えることができた。とても懐かしかった。じんわりと嬉しさがこみあげて来る。

 落ち葉の吹き溜まった急坂をずりずりと下り中尾地蔵。そうそう、あのときここでpanaちゃんから桃の缶詰を冷やしたのをいただいたのだ。

13:40
 沢まで下りて昼ご飯。ラーメンをすすり、hiroさんからぜんざいをいただく。

15:20
 沢の徒渉も無事終え最後の橋を渡って駐車場に着くと猟銃を持ったおじさん、通信機みたいなのを首につけた犬がいた。

 登山口の車を回収後、希望荘で汗を流す。
 お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。


panaちゃん:鈴北〜御池〜奥の平〜白船峠〜藤原岳〜治田峠
milionさん:初冬の御池岳、藤原岳




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